・・・それゆえ、一九三八年ごろフランスでナチスの暴虐にたいして人間の理性をまもるために組織されたヒューマニスティックな人民戦線のたたかいも、日本に紹介される時には、大事な闘争の社会史的な核心をぬいて伝えられた。日本の天皇制は、帝国主義の段階にあっ・・・ 宮本百合子 「自我の足かせ」
・・・どんなに日本の治安維持法は暴虐で、通常人の判断も意志も破壊するものであったかを語っている。日本を今日の全面的破局に導くために、支配者の用いた暴力は、そのように人間ばなれのしたものであった。野呂栄太郎は、その治安維持法によって殺され、その直接・・・ 宮本百合子 「信義について」
・・・人間としての良心、芸術家としての良心に立って書いたと思っていたものが、すぐその作品の後で信じがたいくらい暴虐なことが行われていたことがわかったとき、「北岸部隊」の作者は兵隊たちと、自分と、一般民衆に加えられた欺瞞と侮蔑にきびしく心をめざまさ・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
去る二月二十日、暴虐なる天皇制テロルによって虐殺されたわがプロレタリア文化・文学運動の卓抜なる指導者、組織者、国際的規模におけるボルシェヴィク作家、同志小林多喜二の全国的労農葬は、プロレタリアの恨みの日三・一五記念日を期し・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
ナチスの暴虐に対して国際的な抗議がまき起っているのは当然であると思います。ドイツのナチスを云々する以前、現在われわれの身辺に京大の瀧川教授の問題があり、過去の文化の精華を最も正しく摂取しようとするマルクシストのみならず、ひ・・・ 宮本百合子 「ナチスの暴虐への抗議に関して」
・・・ 或る者は、打算的な賢明さから、人格を無視して所謂金持に運命を任せ、今、その暴虐と冷酷とに、あらゆる笑を失っている者もあるだろう。こんな意識は、また多くの男性にも勿論あるに違いない。自分の妻を嘗て便宜上貰ったと云う反省、従って真実な愛の・・・ 宮本百合子 「深く静に各自の路を見出せ」
・・・ ロシアの豊富で雄大な自然と、そこに営まれている社会の暗い恐るべく暴虐なツァーの封建的絶対制、その上に急に花咲き出した資本主義搾取の二重のおもしの下にあって苦しみ、人生を浪費する人民の悲劇を見つづけるロシアの作家たちは、植民地成金になっ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・現実での暴虐、流血を神秘主義に色どって、その強烈さで、理性を麻痺させることは、ヒトラーの方式であった。その拙劣な真似に、日本の軍部の方式があった。「暁に祈る」が、その名称そのもので実証した。 黄色い特派員 ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫