・・・ 若し、現時の我が文壇多くの芸術家が、人道を尊重し、愛を説き、正義に味方することを信念として、尚お、其の実、個人主義的態度を持続するならば、そして、強いて社会主義的精神を曲解し、其の種の運動に対して偏見を有するならば、ヒューズが平和のた・・・ 小川未明 「芸術は革命的精神に醗酵す」
・・・少年も、もう、いまでは鬚の剃り跡の青い大人になって、デカダン小説と人に曲解されている、けれども彼自身は、決してそうではないと信じている悲しい小説を書いて、細々と世を渡って居ります。昨年まずしい恋人が、できて、時々逢いに行くのに、ふっと昔のお・・・ 太宰治 「おしゃれ童子」
・・・必ずその様の曲解、御無用に被存候。先日も、山木田様へお嫁ぎの菊子姉上様より、しんからのおなげき承り、私、芝居のようなれども、政岡の大役をお引き受け申し、きらいのお方なれば、たとえ御主人筋にても、かほどの世話はごめんにて、私のみに非ず、菊子姉・・・ 太宰治 「帰去来」
・・・君が僕に友情を持っていてくれるのなら、君こそ、そういう小さなことを、悪く曲解する必要はないではないか。尤も、君が痛罵したような態度を、平生僕がとっているとすれば、僕は反省しなければならぬし、自分の生活に就ても考えなければならない、事実考えて・・・ 太宰治 「虚構の春」
・・・言い出せば、それは、あたりまえのことで、なあんだということになるのかも知れないが、下手に言い出して曲解され、損をするのは、いやだ。やはり、黙っていよう。「叡智は悪徳である。けれども作家は、これを失ってはならぬ。」・・・ 太宰治 「女人創造」
・・・これはあまりの曲解かもしれない。しかしそういう解釈も可能ではある。 二 科学上の学説、ことに一人の生きているアダムとイヴの後裔たる学者の仕事としての学説に、絶対的「完全」という事が厳密な意味で望まれうる事であるか・・・ 寺田寅彦 「相対性原理側面観」
・・・例えばその作品に対する作者の自由な態度を曲解して、その本当の意味でない、作者の毫も予期しない、不真面目な事件が起り易いことです。仮りに或る会社内の事を想像してみましょう。その中の女事務員、只単に女が放たれているという自由のために、男がそれを・・・ 宮本百合子 「今日の女流作家と時代との交渉を論ず」
・・・善玉悪玉でない生きた人間を描けということであったが、ソヴェトに於てもこのことは一部の作家に曲解された。リベディンスキーがこの課題に答えようとして書いた「英雄の誕生」は、この提言がどんな風に或る作家の個性的なものによって誤解されるかということ・・・ 宮本百合子 「ヒューマニズムへの道」
出典:青空文庫