・・・この法はウェーランド氏経済書中の説に暗合せるものなり。 小学生徒の数、毎校少なきものは七十人より百人、多きものは二百人より三百人余。学校の内、きわめて清楚、壁に疵つくる者なく、座を汚す者なく、妄語せず、乱足せず、取締の法、ゆきとどかざる・・・ 福沢諭吉 「京都学校の記」
・・・数百年間、日本人が孟子を読みて、これがために不臣の念を起したるものあるを聞かず。書中の一字一句、もって人心を左右するにたるものなりとすれば、君臣の義理固き我が国において、十二君に歴事し公山仏こうさんひっきつの召にも応ぜんとしたる孔子の書を読・・・ 福沢諭吉 「徳育如何」
・・・ 今かりに一歩を譲り、倫理教科書中、私徳のことに説き及ぼさざるに非ず、「一家の間は専ら親愛をもってなる云々、一夫一妻にしてその間に尊卑の幣を免かるるは云々」等の語さえあれば、私徳の要ももとより重んずるところなりと説を作すも、本書をもって・・・ 福沢諭吉 「読倫理教科書」
・・・怱々筆をとって西洋書中の大意を記し、他日諸君の考案にのこすのみ。明治三年庚午一一月二七夜、中津留主居町の旧宅敗窓の下に記す福沢諭吉 福沢諭吉 「中津留別の書」
・・・その然る所以は、訳者が心を用いて特に避けたるにあらずして、原書中を求めて斯る醜談に見当たらざればなり。今仮に西洋の原書を離れて、これに易うるに日本流の落語滑稽を以てせんとして、その種類を集めたらばいかなるものを得べきや。談柄必ず肉体の区域に・・・ 福沢諭吉 「日本男子論」
・・・詠み、新様の歌も詠み、慷慨激烈の歌も詠み、和暢平遠の歌も詠み、家屋の内をも歌に詠み、広野の外をも歌に詠み、高山彦九郎をも詠み、御魚屋八兵衛をも詠み、侠家の雪も詠み、妓院の雪も詠み、蟻も詠み、虱も詠み、書中の胡蝶も詠み、窓外の鬼神も詠み、饅頭・・・ 正岡子規 「曙覧の歌」
・・・彼は某に与うる書中にこの曲のことを記して馬堤は毛馬塘なり、すなわち余が故園なりといえり。やや長じて東都に遊び、巴人の門に入りて俳諧を学ぶ。夜半亭は師の名を継げるなり。宝暦のころなりけん、京に帰りて俳諧ようやく神に入る。蕪村もと名利を・・・ 正岡子規 「俳人蕪村」
・・・この本に沿って、三笠書房の歴史全書中の「洋学論」が読まれたなら、著者が一つの情熱をもって、祖先たちが世界の真理の到達点を、わが封建の日本へ新しい力として齎そうとした努力の価値を語っていることを知ることが出来る。東洋経済新報社出版の「現代日本・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・で、作者は地図入りの前書中に云っている。「ヤング案のドイツと五ケ年計画のロシアと恐慌日本とソヴェト支那と朝鮮等を背景に、戦後世界資本主義の第三期、大恐慌、大建設、対立激化、ファッショ化、革命力の昂揚などを描破しようと企てた。」 ――新世・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学における国際的主題について」
出典:青空文庫