・・・かつて世の批評家たちに最上級の言葉で賞讃せられた、あの精密の描写は、それ以後の小説の片隅にさえ、見つからぬようになりました。次第に財産も殖え、体重も以前の倍ちかくなって、町内の人たちの尊敬も集り、知事、政治家、将軍とも互角の交際をして、六十・・・ 太宰治 「女の決闘」
・・・いちいち隣りの王子のほうを盗み見て、こっそりその手つきを真似て、どうやら口に入れる事が出来ても、青虫の五臓のサラダや蛆のつくだ煮などの婆さんのお料理ばかり食べつけているラプンツェルには、その王さまの最上級の御馳走も、何だか変な味で胸が悪くな・・・ 太宰治 「ろまん燈籠」
・・・つねに存在の最上級に居り、永遠に醒めている、互に誤解することさえない СССРが何故Dの作品を出版しないか その理由は、彼の芸術におけるこの危険にとんだ二重性による おどろくべき迫真力と虚構との。 それこそドストイェフスキー・・・ 宮本百合子 「ツワイク「三人の巨匠」」
出典:青空文庫