・・・ 今日の最新技術を駆使して高度に合理化されている重工業工場の生活が、そこで働いている優秀な勤労者たちの精神と肉体とに求めているテムポとリズムとは、どういうものであろうか。現代の科学の能力を最大限に発揮して刻々に活動している機械の速力、能・・・ 宮本百合子 「今日の生活と文化の問題」
・・・ アメリカの最新型のスタイル・ブックが紹介されて、そこには見事なイヴニング・ドレスが華やかな裾を拡げて示されていました。また日本の平面的な顔ではとても冠りこなすことの出来ない、風変りな大帽子などの新型も示されていました。それらが、わたく・・・ 宮本百合子 「自覚について」
・・・ 目に余る贅沢 金銀の使用がとめられている時代なのにデパートの特別売場の飾窓には、金糸や銀糸をぎっしり織込んだ反物が出ていて、その最新流行品は高価だが、或る種の女のひとはその金めだろうけれどいかつい新品を身につ・・・ 宮本百合子 「女性週評」
・・・話対手の年寄達もいるし、彼女達を聴手とすれば、祖母は最新知識の輸入者となれた。行きたくなると、彼女は、息子や孫のいるところで、思いあまったように呟いた。「おりゃあはあ、安積へでも行こうと思うごんだ」 余り思い入った調子なので、皆・・・ 宮本百合子 「祖母のために」
・・・これはさながら最新式の欧州航路の汽船の内部のようだ。 真白いエナメル塗の椅子がいくつも並んだ清潔至極な理髪室がある。 大きい大きいニッケル湯沸しの横に愛嬌のいい小母さんが立って一杯三哥のお茶をのませ、菓子などを売る喫茶部は殷やかな話・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・ 戦争という事業は、戦場で、最新式の武器で、兵士という名でそこへ送り出されたそれぞれの国の人民たちに殺し合いをさせるばかりか、軍需生産という巨大な歯車に小経営者の破産をひっかけ、勤労者をしぼり上げ、女子供から年よりの余生までを狩りたてて・・・ 宮本百合子 「便乗の図絵」
・・・リズム模様、最新流行モダーン染。 ――上へ参ります、上へ参ります。 ――美容術をやって見せるんだよ。 ――だって二十銭も違うんだもん、そりゃそうだろう。 緑色の仕着せを着た音楽隊はフィガロの婚礼を奏し、飾棚にロココの女の入黒・・・ 宮本百合子 「未開な風景」
・・・労働能力だけは現代最新技術に適応して訓練されているが、文化面では渾沌におかれている夥しい数の青年男女が彼等と彼女たちの僅かの時間と金銭とを、嬉々としておどろくような情熱をもって映画に投じている。高杉早苗の新婚旅行の首途に偶然行きあわせたと云・・・ 宮本百合子 「観る人・観せられる人」
・・・ 次の室の戸をあけて内部を見せた。「風呂に入ったり、髪を洗ったりして、すっかり産院の衣服にきかえて貰います」 最新式の設備でシャワーがある。風呂、体重計量器。「次は、陣痛室ですが……」 戸のハンドルをそーっとあけた。広い・・・ 宮本百合子 「モスクワ日記から」
・・・の煙を立て、しかも世界最新の物理力による破壊にさえ面しました。インドの人々の小屋。中国の最も進歩した世代の人々が、古き大地の第何世紀層かの洞窟ぐらしをしている不思議さ。今日この地球は、人間の発展のための矛盾や摩擦の諸問題にあふれています。そ・・・ 宮本百合子 「よろこびの挨拶」
出典:青空文庫