・・・ 門の中の子供らは、たいそうこの有り様を見て驚きました。そして、犬の後を追って門のところまで出てきてみますと、もはや犬が外をもふり向かずに三郎についてあっちへゆきかけますので、中にも一人の子供は、しくしく声をたって泣き出しました。「・・・ 小川未明 「少年の日の悲哀」
・・・ ちょうど、この有り様を、外からもどってきた吉坊の父親が、見たのでした。彼は、このいじらしいようすが、腹立たしくもありました。そして、にらみつけたのです。 しかし、夢中で走っている吉坊にはわからないのでした。「ああ、おれが悪かっ・・・ 小川未明 「父親と自転車」
・・・ この有り様を見ると、あまりの驚きに、少年は声をたてることもできず、驚きの眼をみはって、いっしょうけんめいにその光景を見守っていました。 小川未明 「眠い町」
・・・林や、森にかかった雪がふるい落とされて、一時は、目も口も開けない有り様でありました。 彼は、もう自分は、いよいよ死ぬのだと思いました。そして、しばらく雪の上にすわって闇を見つめて後先のことを考えました。 そのとき、彼は、かすかに、前・・・ 小川未明 「宝石商」
・・・この有り様を見ると力蔵はすぐに良吉の持っている笛が欲しくなりました。「君にオルゴールを貸してあげるから、その笛を僕にくれないか。」と、今度力蔵は良吉に向かって頼みました。良吉は快く承諾して、その笛を力蔵に与えました。そして、自分はは・・・ 小川未明 「星の世界から」
・・・ 少女は、この有り様を見て驚きました。そして、そこに泣きくずれました。「ああ、わたしが悪かった、他のものなどをうらやんだものだから……神さまにたいしてすまないことをした。ああ、どうしたらいいだろう。」といって、地に伏してわめきま・・・ 小川未明 「夕焼け物語」
・・・と、小田は、この有り様を見て、感心しました。 そのうちに、話す時間もなく、ベルが鳴ってお教室に入り、授業がはじまりました。 いよいよお昼になって、みんながお弁当を食べるときとなったのです。ひとり、北川だけは机に向かって、宿題をしてい・・・ 小川未明 「笑わなかった少年」
出典:青空文庫