・・・が、偉大に直面することは有史以来愛したことはない。 広告「侏儒の言葉」十二月号の「佐佐木茂索君の為に」は佐佐木君を貶したのではありません。佐佐木君を認めない批評家を嘲ったものであります。こう言うことを広告するのは「文芸春・・・ 芥川竜之介 「侏儒の言葉」
・・・が、寝言にまでもこの一大事の場合を歌っていたのだから、失敗うまでもこの有史以来の大動揺の舞台に立たして見たかった。 ヨッフェが来た時、二葉亭が一枚会合に加わっていたらドウだったろう。あの会合は本尊が私設外務大臣で、双方が探り合いのダンマ・・・ 内田魯庵 「二葉亭追録」
・・・どだいそんな、歴史的なものじゃあ無えような気がする。有史以前から、お前たちには、そんな強さがあったんだ。そうしてまた、これから、この地球に人類の存在するかぎり、いや、動物の存続する限り、お前たちは、永久に強いんだ。あなたは、はずかしくな・・・ 太宰治 「春の枯葉」
・・・ 日本人の先祖がどこに生まれどこから渡って来たかは別問題として、有史以来二千有余年この土地に土着してしまった日本人がたとえいかなる遺伝的記憶をもっているとしても、その上層を大部分掩蔽するだけの経験の収穫をこの日本の環境から受け取り、それ・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・ぜんざいを召したまえる桓武天皇の昔はしらず、余とぜんざいと京都とは有史以前から深い因縁で互に結びつけられている。始めて京都に来たのは十五六年の昔である。その時は正岡子規といっしょであった。麩屋町の柊屋とか云う家へ着いて、子規と共に京都の夜を・・・ 夏目漱石 「京に着ける夕」
・・・少なくとも鎖港排外の空気で二百年も麻酔したあげく突然西洋文化の刺戟に跳ね上ったぐらい強烈な影響は有史以来まだ受けていなかったと云うのが適当でしょう。日本の開化はあの時から急劇に曲折し始めたのであります。また曲折しなければならないほどの衝動を・・・ 夏目漱石 「現代日本の開化」
・・・従ってまた人類の有史以来数千年の業績をも、しみじみと自己の問題として回顧せしめる。この事がもしある芸術的天才の心裡に起こったならば、そこに何らか雄大な結晶物が生まれないではいないだろう。 考えてみると、古来の芸術的傑作には戦争に刺激せら・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫