・・・唯台所で音のする、煎豆の香に小鼻を怒らせ、牡丹の有平糖を狙う事、毒のある胡蝶に似たりで、立姿の官女が捧げた長柄を抜いては叱られる、お囃子の侍烏帽子をコツンと突いて、また叱られる。 ここに、小さな唐草蒔絵の車があった。おなじ蒔絵の台を離し・・・ 泉鏡花 「雛がたり」
・・・そして日が照っているために荷物の上にかざされた赤白だんだらの小さな洋傘は有平糖でできてるように思われます。 そしててくてくやって来ます。有平糖のその洋傘はいよいよひかり洋傘直しのその顔はいよいよ熱って笑っています。(洋傘直し、洋・・・ 宮沢賢治 「チュウリップの幻術」
・・・木立の上で、緑、黄、卵色をよりまぜた有平糖細工みたいなビザンチン式教会のふくらんだ屋根が、アジア的な線でヨーロッパ風な空をつんざいている。 掘割に沿って電車が走って行く。 再び公園だ。菩提樹のなかにロシアのイソップ・クルイロフの・・・ 宮本百合子 「スモーリヌイに翻る赤旗」
出典:青空文庫