・・・今の偶然に起った簡単な問答は、お互の胸に強く有意味に感じた。民子もそう思った事はその素振りで解る。ここまで話が迫ると、もうその先を言い出すことは出来ない。話は一寸途切れてしまった。 何と言っても幼い両人は、今罪の神に翻弄せられつつあるの・・・ 伊藤左千夫 「野菊の墓」
・・・という事は、今でも有意味に響く。そこでこの心持ちが作の上にはどう現れているかと云うと、実に骨に彫り、肉を刻むという有様で、非常な苦労で殆ど油汗をしぼる。が、油汗を搾るのは責めては自分の罪を軽め度いという考えからで、羊頭を掲げて狗肉を売る所な・・・ 二葉亭四迷 「予が半生の懺悔」
・・・こんな風だから、他人は作をしていねば生活が無意味だというが、私は作をしていれば無意味だ、して居らんと大に有意味になる。この相違を来すにゃ何か相当の原因が無くばなるまい。 私は二十世紀の文明は皆な無意義になるんじゃないかと思う。何と云って・・・ 二葉亭四迷 「私は懐疑派だ」
出典:青空文庫