・・・所謂有能な青年女子を、荒い破壊思想に追いやるのは、民主革命に無関心なおまえたち先輩の頑固さである。 若いものの言い分も聞いてくれ! そうして、考えてくれ! 私が、こんな如是我聞などという拙文をしたためるのは、気が狂っているからでもなく、・・・ 太宰治 「如是我聞」
・・・この点ではかえって子供のほうが親よりも多芸であり有能であるとも言われる。親鳥だと、単にちょっと逆立ちをしてしっぽを天に朝しさえすればくちばしが自然に池底に届くのであるが、ひな鳥はこうして全身を没してもぐらないと目的を達しないから、その自然の・・・ 寺田寅彦 「あひると猿」
・・・その冒頭に、先ず有能な学者を日本に派遣して大学地震研究所におけるあらゆる研究の模様を習得せしめよということ、次に末広所長を米国に迎えて講演させ、また米国における将来の研究方針についてその助言を求め、また末広式の地震分析器を各所に据え付けて地・・・ 寺田寅彦 「工学博士末広恭二君」
・・・きみのような有能な人物が、熊本にとどまって、ぜひガンばってくれんことにゃ――」 けっきょく三吉は、新婚の二人に夕めしもくわせず、夜ふけまで縁さきにこしかけていた。 二 家のひさし下に、ひよけのむしろをたらして、三・・・ 徳永直 「白い道」
・・・常識的な大人を恐怖させるほど率直な真実探求の欲望にもえる十五六歳より以後の年代を、これらの有能な精神は、そのままの真率さで戦争のための生命否定、自我の放棄へ導きこまれた。専門学校では文科系統の学徒が容しゃなく前線へ送り出され、理科系統のもの・・・ 宮本百合子 「生きつつある自意識」
・・・なぜなら、職場で積極的な労働者は殆ど常に組合であれ何であれ、自分たちの組織で有能なひと達であり、ある意味で指導的な人たちである。すべての組織の活動がその日々の現実において、いつもその人にとって歴史における労働者階級の任務のよろこばしさ、勇気・・・ 宮本百合子 「現代文学の広場」
・・・のスローガンの社会的実践によって導き出されて来た新しい労働者農民作家群の輩出、社会主義建設がすすむにつれて顕著なインテリゲンチア作家の階級的移行、有能な新幹部の多種多彩な文学的活動と、より広汎な人民層のプロレタリア化の可能性を、より高い見地・・・ 宮本百合子 「社会主義リアリズムの問題について」
・・・今日新しくプロレタリア文学の活動を開始した有能な人々が、どのくらい、文学の特殊的な技術の問題について、その微細な点にまで具体的探究をすすめようと努力しているかということがよくわかる。過去の日本の若いプロレタリア文学運動が顕著な弱点として持っ・・・ 宮本百合子 「新年号の『文学評論』その他」
・・・を建設し、彼らの人間性の尊貴と有能性とを腐敗から防衛したことは、映画芸術で「人生案内」の感動的作品を生む動機ともなった。これから日本語に翻訳されようとしている「教育的叙事詩」という卓抜な文学作品となって現れた。そしてソヴェト社会建設の各分野・・・ 宮本百合子 「政治と作家の現実」
・・・が行動の指針として有能な若い男女の間で読まれたということも、おのずから今日肯けるのである。 ツルゲーネフとトルストイとの衝突は既に文学史的な出来ごとである。二人の大作家が十五年間も意志の疏通を欠いたばかりか、或る時は本気で決闘までしかね・・・ 宮本百合子 「ツルゲーネフの生きかた」
出典:青空文庫