・・・ 日本で、戦争中、どれだけ沢山の有能な若者が死んで行ったろう。彼等はどのように自分の置かれた立場を理解し、省察し、批判したであろうか。 日本の当局は、若い精神とその洞察力とを極度に恐れた。通信はやかましく検閲され、帰還するとき日記を・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・ソヴェト権力は、この巨大な新建設の要求のために、ドシドシ有能な市民の自発性を抱擁した。その新しい社会の働きてとしての価値においては男、女の旧い区別は消されている。 セイフリナは十月革命の時にもう舞台をやめて、オレンブルグ地方で図書館監督・・・ 宮本百合子 「プロレタリア婦人作家と文化活動の問題」
・・・ブルジョア・ジャーナリズムがわが陣営の作家を恐怖し、有能な作家が投獄されている時、われらは全力をつくし、どの一部を切ってもピチピチとそこだけで叫ぶべきことを叫び得るようなボルシェビキ的作品を創作してゆかなければならぬ。対立する階級の独占的文・・・ 宮本百合子 「文学に関する感想」
・・・ 党は多くの人材を加え、婦人の間にも代議士その他として有能な活動家を出しているとき、実際に働けないとわかっているものを立たせ、当選させ大衆の信頼を裏切ることが賢明といえるでしょうか。わたしが健康をもっていないことは残念ですが、わたし自・・・ 宮本百合子 「文学について」
・・・多くの有能な生命が監獄とシベリヤとで滅ぼされている。しかし坐って論じている人々は、歴史の必要性というものを自身の偸安の便利な云いわけにつかった。この時代、ゴーリキイはコロレンコに近づき、コロレンコに於て、信頼するに足るインテリゲンツィアのタ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・「ロシアを巡遊し得るということは一人の革命的作家に――ロマノフ会社に対して一つの有能な打撃を与えるための百倍もよりよき機会を提供する……」と。 ソヴェト同盟へゴーリキイは帰って来た。今こそどんな手紙が、全世界にあってレーニンの示した社会・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ 大迫さんにしろその周囲の中では有能な一人の娘さんであることは確だし、野沢富美子という人の文筆上の才も将来に期待したい力を暗示している。 この二様の筆者たちが、時代的な一つの傾向である環境への我とも知らぬ安易な封鎖から真に成長しぬけ・・・ 宮本百合子 「若い婦人の著書二つ」
・・・同時に、日本の平和と幸福とのために、婦人の任務の価値を十分知っている有能な男子の社会活動の諸分野に、婦人の創意と批判とを参加させ反映させる公の機会の一つとすること。この二通りの作用をとおして、男子と婦人との真面目、積極な協働こそ、民主的な社・・・ 宮本百合子 「われらの小さな“婦人民主”」
・・・たとえ有能なる影響を吾人の心霊に与えずとも少なくとも彼の霊的努力は彼がばかにしていた「小児輩」にかなりの勢力がある。この霊的執着の半面には物質を超越せんがために強烈なる煩悶があった。「草枕」の画かきさんはこの世を「住みにくい国」と言う。・・・ 和辻哲郎 「霊的本能主義」
出典:青空文庫