・・・話は脱線するが、最近に見た新発明の方法によると称する有色発声映画「クカラッチャ」のあの「叫ぶがごとき色彩」などと比べると、昔の手織り縞の色彩はまさしく「歌う色彩」であり「思考する色彩」であるかと思われるのである。 化学的薬品よりほかに薬・・・ 寺田寅彦 「糸車」
・・・ 有色映画 音声を得た映画がさらに色彩を獲得することによっていかなる可能性を展開するかという問題がある。 無声映画の時代にフィルムを単色に染めることによってあるいは月夜、あるいは火事場の気分を出したことがあった。・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・例により夜会服姿の黒奴に扮した舞踊などもあったが、西洋人ばかりの観客の中に交じった我々少数の有色人種日本人には、こうしたニグロの踊りは決して愉快なものではなかった。 パリの下宿はオペラの近くであって、自分の借りていた部屋の窓から首を出し・・・ 寺田寅彦 「マーカス・ショーとレビュー式教育」
・・・同時に、一人の子供をピオニイルにしようとし、なし得たことによって得た経験が、亀のチャーリーの心持をプロレタリアとして、またアメリカ帝国主義の下で有色人種労働者として二重の搾取と抑圧とに闘っている日本人移民労働者としてのチャーリーの心持をどの・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・その西部で生れたアグネスが、カリフォルニヤ大学で、そこの理事会がインド人の講演に反対したことから、有色人種に対する研究心を刺戟され、永年に亙る人種的偏見への闘争をはじめていることはまことに面白い。アグネスは、自分が生きて来た経験から、自分の・・・ 宮本百合子 「中国に於ける二人のアメリカ婦人」
出典:青空文庫