・・・昨今の外部的な条件は、例えばいつぞや『朝日新聞』が石坂洋次郎氏の小説をのせる広告を出したら、急にそれはのらないことになって坪田譲治氏の「家に子供あり」になったような影響を示す場合もあるけれどもそれは、文学にとっては相対的な条件であって、この・・・ 宮本百合子 「おのずから低きに」
・・・子供の日にちなんで、五月二日の朝日新聞「天声人語」に「ケティを救え」の物語がのっていた。四月八日の午後、カリフォルニア州サン・マリノ町であき地に遊んでいたケティという三つの女の児が、草むらにかくれていた古井戸へおっこちた。サン・マリノのその・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・それがでたらめの噂でなかった証拠には、トルーマンの当選が確認された翌五日、『朝日新聞』には、『主婦之友』が先ばしりの悲喜劇をあらわにして、特派記者による奇蹟的会見記という特報でデューイ夫妻会見記を仰々しく広告している。このでんで、『主婦之友・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
毎月いくつかのプロレタリア小説、ブルジョア小説が、いろいろな雑誌に発表される。 つづいて、新聞その他に文芸批評が現れる。この頃のブルジョア・ジャーナリズムは、例えば『朝日新聞』が今度やっていたように、文学についての専門・・・ 宮本百合子 「こういう月評が欲しい」
・・・ このあいだ朝日新聞が講和問題についてアンケートを集めたとき「単独講和でいいから、そして軍事同盟の条件がついてもよいから早いほどよい」と答えたのはおもに実業家でした。学者、作家、その他の人々は、「どうせ政府が宣伝しているように手ッとり早・・・ 宮本百合子 「講和問題について」
・・・というような帰朝談などをきかされると、わたしたちにいろいろの疑問がわいてくる。朝日新聞が、特別寄稿料として三十万円片山氏におくったと、ジャーナリズムでいわれているが、この金額を三六〇でわった千ドル弱で西ヨーロッパとアメリカが巡遊できようとも・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・一月三十一日の朝日新聞は三輪田元道氏、山脇女学校教師竹田菊子氏、警視庁保安課長国監氏等の意見をのせている。等しくレビューの男役をする女優、例えば水ノ江タキ子その他に若い女学生が夢中になって、その真似をして髪を切るとか、何か贈り物をしたいため・・・ 宮本百合子 「昨今の話題を」
・・・ 七、朝日新聞に拠れる態度 朝日新聞の文芸欄にはいかにも一種の決まった調子がある。その調子は党派的態度とも言えば言われよう。スバルや三田文学がそろそろ退治られそうな模様である。しかしそれはこの新聞には限らない。生存競争が・・・ 森鴎外 「夏目漱石論」
・・・確かそのころ、漱石は志賀君に『朝日新聞』へ続きものを書くことを頼んだのであったが、志賀君は、気が進まなかったのだったか、あるいは取りかかってみて思うように行かなかったのだったか、とにかくそれをことわるために漱石を訪ねた。それが二、三日前の出・・・ 和辻哲郎 「漱石の人物」
・・・夏目漱石は西田先生の戸籍面の生年である明治元年の生まれであるが、明治四十年に朝日新聞にはいって、続き物の小説を書き始めた時には、わたくしたちは実際老大家だと思っていた。だから明治四十二年に正味の年が四十歳であった西田先生も、同じく老大家に見・・・ 和辻哲郎 「初めて西田幾多郎の名を聞いたころ」
出典:青空文庫