・・・のか知らんとちょっと不審を起してみる、思うにその年限は疾ッくの昔に来ていて今まで物置の隅に閑居静養を専らにした奴に違ない、計らざりき東洋の孤客に引きずり出され奔命に堪ずして悲鳴を上るに至っては自転車の末路また憐むべきものありだがせめては降参・・・ 夏目漱石 「自転車日記」
・・・すなわち徳川家の末路に、家臣の一部分が早く大事の去るを悟り、敵に向てかつて抵抗を試みず、ひたすら和を講じて自から家を解きたるは、日本の経済において一時の利益を成したりといえども、数百千年養い得たる我日本武士の気風を傷うたるの不利は決して少々・・・ 福沢諭吉 「瘠我慢の説」
・・・一番ひどいのは宇野浩二の『文学御前会議』で、あれは文学のために人生をすてた大作家の末路だ。」「文学のために人生をすてているんだから、その致命的なものは、どうにもならない。中野さん、あなたはこれからも批評家として行くわけですが、このことは重要・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ることには大して注目しないで、ごく大まかに、やっぱり女の人生ってどこの国でも同じなのねえと嘆息し、ぼんやりと、わたしはこんな一生は欲しくない、もっとたのしい女の人生だってあっていいわけだわとジャンヌの末路をおそろしく感じる。 こういう受・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
出典:青空文庫