・・・のホンの荒筋である。枚数が長くなることが気になって非常に不完全にしか書けなかった。 こゝには、インタナショナルの精神と、帝国主義戦争××が叫ばれている。 以上に挙げた、「クラルテ」と「夜」と、「義人ジミー」の三つの作品に於ては、そこ・・・ 黒島伝治 「反戦文学論」
・・・ あなたから長いお手紙をいただき、ただ、こいつあいかんという気持で鞄に、ペン、インク、原稿用紙、辞典、聖書などを詰め込んで、懐中には五十円、それでも二度ほど紙幣の枚数を調べてみて、ひとり首肯き、あたふたと上野駅に駈け込んで、どもりながら・・・ 太宰治 「風の便り」
・・・指定の枚数である。ふたたび、現実の重苦しさが襲いかかる。読みかえしてみたら、甚だわけのわからぬことが書かれてある。しどろもどろの、朝令暮改。こんなものでいいのかしら。何か気のきいた言葉でもって結びたいのだが、少し考えさせて下さい。 ・・・ 太宰治 「古典竜頭蛇尾」
・・・ 約束の枚数に達したので、ペンを置き、梨の皮をむきながら、にがり切って、思うことには、「こんなのじゃ、仕様がない。」 太宰治 「思案の敗北」
・・・皆ただ、枚数が短いというだけのものである。戦争が終って、こんどは好きなものを書いてもいいという事であったので、私は、この短篇小説のすたれた技法を復活させてやれと考えて、三つ四つ書いて雑誌社に送ったりなどしているうちに、何だかひどく憂鬱になっ・・・ 太宰治 「十五年間」
・・・ ちょうど約束の枚数に達したから、後の句に就いては書かないが、考えてみると私も、ずいぶん思いあがった乱暴な事を書いたものである。芭蕉、凡兆、去来、すべて俳句の名人として歴史に残っている人たちではないか。夏の一夜の気まぐれに、何かと失礼に・・・ 太宰治 「天狗」
・・・そうして頗る、非良心的な、その場限りの作品を、だらだら書いて、枚数の駈けひきばかりして生きて来た。芸術の上の良心なんて、結局は、虚栄の別名さ。浅墓な、つめたい、むごい、エゴイズムさ。生活のための仕事にだけ、愛情があるのだ。陋巷の、つつましく・・・ 太宰治 「八十八夜」
「猫」の稿を継ぐときには、大抵初篇と同じ程な枚数に筆を擱いて、上下二冊の単行本にしようと思って居た。所が何かの都合で頁が少し延びたので書肆は上中下にしたいと申出た。其辺は営業上の関係で、著作者たる余には何等の影響もない事だから、それも善・・・ 夏目漱石 「『吾輩は猫である』中篇自序」
・・・五十枚ほどの枚数の中に、果してよく描きつくせるであろうか。私の文学的教養と力量とが、この紛糾と錯綜を、明確に洞察し、整理し得るであろうか。少なからぬ困難が予想されるが、私は読者の忍耐と誠意と自身の熱意とに信頼して、この仕事をやって見る。この・・・ 宮本百合子 「意味深き今日の日本文学の相貌を」
・・・どれもなかり枚数の多いもので、殆んど『中央公論』が主でしたが、中には『東京日日新聞』に載せた「三郎爺」などというのもありました。「三郎爺」は軽いユーモアの味を持たせようとして、それがちっとも現れていないようなところがあって、処女作と一緒・・・ 宮本百合子 「十年の思い出」
出典:青空文庫