・・・現代に処する女としての新しい義務は、今日欲する欲しないにかかわらず新しく増大され、拡大されつつある女の生活経験と、すくなからぬ犠牲との中から、やがて婦人全体の幸福を増す何ものかをつかんで来ようとする根強い努力にあるのである。〔一九三七年十二・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ ソヴェト生産拡張五ヵ年計画は、複雑な農村社会主義化の実践へ根強い組織力で迫って来た。 先ず、耕作用トラクター七万台が進出した。「トラクター中央」を囲むいくつかの集団農場が、生産手段の工業化につれて、労働の種別基本賃銀による共同・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ だが、プロレタリア作家たちは、プロレタリア・農民が解放へ向って闘う複雑な現実の一部として、あますところなくこれらの一見些細な、然し根強い婦人の日常闘争の事実を、芸術化しているとは云い得ない。 プロレタリア・農民自身の語りてとしての・・・ 宮本百合子 「国際無産婦人デーに際して」
・・・にしろ、作品の世界は、その中の主人公たちが常識と一種の卑俗さによって敗北している通りに、作者の根強い常識によって人間性の把握はどたんばで通俗に落ちこんでいるのが特徴である。 尾崎士郎の「人生劇場」がこの作者としてのある達成を示しつつ作品・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
・・・一面から云えば、其丈、純粋で、根強い愛が皆を、しっかりと一つ枝に結びつけて居たのだ。 自分には、そのあけっぱなし、無くなす必要もない筈の子供らしさが失せない。つい、受けた感じをそのままAに話す。若しAが、その話にも煩わされず、又直ぐ忘れ・・・ 宮本百合子 「二つの家を繋ぐ回想」
・・・ただイデオロギーとして社会主義が分ってきたばかりでなく、人間は幸福を求めているというなまなましく根強い実感、熱情そのものとして個人の人生も歴史の展望の中に見とおされて来たときの社会主義的リアリズムの創作方法。 文学の創作方法が社会の歴史・・・ 宮本百合子 「文学と生活」
・・・宋画のある者に見られるような根強い写実は、決して情趣表現の動機から出たものではない。氏を浪漫的な弱さから連れ出すものは、おそらくこれらの方法のほかにあるまい。 いずれにしても小林氏が自己の直接な感情を画面に投げ出そうとしているのは感情の・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
・・・主我欲の根強い力と、それに身を委せようとする衝動と。愛と憎しみと。自己をありのままに肯定する心と、要求の前に自己の欠陥を恥ずる心と。誠実と自欺と。努力と無力と。生活を高めようとする心と、ほしいままに身を投げ出して楽欲を求むる心と。――これら・・・ 和辻哲郎 「「ゼエレン・キェルケゴオル」序」
出典:青空文庫