・・・と、明治四十年代に、桑田熊蔵工学博士が議会でアッピールして満場水をうったようになった、と記録されているのをみても分る。また細井和喜蔵の「女工哀史」は日本の悲劇的記録である。第一次ヨーロッパ大戦後に出来た国際連盟の世界労働問題の専門部では、日・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・母は台所の方へ行って何か指図をしていたが、そのときのは、となりの家の門の植込のところで捕えられた。桑田さんの書生さんが、あやうく斬られかかったというような話を、こわさで息を弾ませつつ傍できいていた。 次のときは、もうそれから何年も経って・・・ 宮本百合子 「からたち」
・・・千葉先生と河崎なつ先生とが、桑田芳蔵博士の教室で心理学の勉強をされたとき私を仲間に加えて下すったことがあった。ヴントの本で、一寸した実験もやったりして、その本の終るまで通った。今日ありきたりの先生気質をいくらか知った上で考えれば、こういうこ・・・ 宮本百合子 「時代と人々」
・・・或夏の夜特別な燈火の下で母と子とがそうやっていたら、突然、桑田さんの方で泥棒! 泥棒! と叫ぶ声がして、バリバリ竹垣を踏破る音が起った。母は、さっと廻転椅子を立ち上るなり、物をも云わず庭に向ってまだ開け放されていた椽側の雨戸をしめた。宵の八・・・ 宮本百合子 「中條精一郎の「家信抄」まえがきおよび註」
・・・その頃の日本の産業は幼稚であったばかりか、一番数の多かった紡績工場で、女工さんがどんなにひどい条件で働かされていたかということは、桑田熊蔵博士が、議会で訴えたとおりでした。女工たちは三十六時間も働かせられ、云いつけにそむけば天井から吊される・・・ 宮本百合子 「メーデーと婦人の生活」
出典:青空文庫