・・・その植民地問題の論じかたをはじめとして、婦人、子供の問題をふくむすべての社会問題のとりあつかいにおいて。作者は、モスクワ生活でユートピア的に実験的に社会主義を理解したのではなかった。ロンドンに暮しパリを見、ベルリンの病的な印象などとソヴェト・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第九巻)」
・・・女性の風俗、モードの問題ひとつをまじめにとりあげても、こんにちではそこに、日本の流行が植民地的な文化趣味に従属させられてはならないという課題が立ちあらわれる。同時に、日本の独自性というものが一般の関心をひいている現在を利用してふたたび、超国・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第十五巻)」
・・・ 広く知られている通りイタリーのアフリカ植民地政策の活溌さはエチオピア問題を見ても明かであり、リビアは最近急速に戦時軍需資源の獲得地となっている。鉄、ニッケル、ジュラルミン等の原鉱を多量に生産することが分ったそのためにイタリーは附近の土・・・ 宮本百合子 「イタリー芸術に在る一つの問題」
・・・さもなければあんまり早くアメリカ風になったという題でうつされている植民地的ハイカラーな日本娘のスナップがある。それはサン・アクメの写真にとられて外国の諸新聞や雑誌にのせられている。 これらの現象を見くらべたとき、すべての真面目なひとの心・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・第一次ヨーロッパ大戦後に出来た国際連盟の世界労働問題の専門部では、日本の労働者のおかれている条件は全く植民地労働の条件だと定義された。つまり世界労働賃金平均の半分から、三分の一の賃金で日本の労働者は働いていた。しかもその世界的にみると植民地・・・ 宮本百合子 「衣服と婦人の生活」
・・・歴史のありのままの表現で語れば、日本のおくれた資本主義は、日清戦争から十年後に経たこの侵略戦争で再び中国の国土を血ぬらし殖民地化しながらその興隆期に入ったわけであった。ウラルの彼方風あれて、とオルガンに合わせて声高くうたっていた若い母に、そ・・・ 宮本百合子 「菊人形」
・・・企業家にとって、地方は、文化的殖民地めいた関係におかれた。地方そのものの文化的創造力は高めようとされず、その性格をより充実させ、高貴ならしめようとは援助されず、ただ、欲求だけをもっていて、それと引かえに与えられるいかがわしい一冊の本であった・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・ かえりみれば、これまで私たち日本人が教えこまれていた日本の歴史は、むきになって強調されていた上代の神話と、後代の内国戦の物語、近代日本の支那・ロシア・朝鮮・満州などにおける侵略戦争とその植民地化との物語であった。その時代時代の軍事上の・・・ 宮本百合子 「『くにのあゆみ』について」
・・・う言葉とありがとうということばしか意志の表示を知らないように自分の政府によって指導され扱われている日本の人々が、幾年かのちのまたこうした場合に立ちいたって、ついうっかり自分たちの現実判断をとりちがえ、植民地人民の世論調査によれば、などととん・・・ 宮本百合子 「現代史の蝶つがい」
・・・往来から夜の空の見える具合がそういう連想を呼び起こしたのかと思われるが、その時には新しく建設せられる東京がいかにも植民地的であるのを情けなく思った。しかしその後二年もたつとシンガポールの場末という感じはなくなった。おいおい高層建築が立ち並ぶ・・・ 和辻哲郎 「城」
出典:青空文庫