・・・ 窪川稲子の業績や将来の発展というものは、それ故すべての積極的な、忍耐づよい、天分あるプロレタリア作家の生涯に対して云い得るように、全く階級の力の多岐多難な発展の過程とともに語られて初めて本質に迫り得るものであると思う。歴史の新たな担い・・・ 宮本百合子 「窪川稲子のこと」
・・・ 日本詩歌のリズムの研究が、メトロノームの搏音をつかっての心理学的実験によってなされたことは、この方面において若い心理学徒の多くの業績が期待され得ることを意味すると思う。 文学に関する面でも、近頃文章学は従来の作家に縁の遠かった修辞・・・ 宮本百合子 「芸術が必要とする科学」
・・・の媒介物たる金銭というものの魔術性をあらわにし、それが近代社会を支配する大怪物として蓄積されてゆく過程を明らかにして、人間性の勝利の実質、生産する者が生産を掌握することの自然さを示した社会科学者たちの業績と、それを実践する人々にたいして、そ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ 七月の党大会に、ラップ代表としてキルションが過去二年間のソヴェト・プロレタリア作家の業績について報告した中で、四十余名の作家の名と作品の名とを推薦した。その中に、コムソモール出身で、労農通信員だった新しい作家たちが少なからず紹介されて・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・歴史の或時の業績の中から積極的なものがちゃんと引出されるのは当然であり、悦びです。 十八日の午後二時。 あれからかえって来て、急に夏フトンをほして、ボタンをつけて、今江井が又のっけて中川へ届けに出かけたところです。 夏ぶとんがあ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
どこの国にでも、文化、文芸の業績に対する賞というものはあるらしい。その詮衡が世界的な規模で行われ、最もひろい意味で人類的な影響をもつ仕事に与えられるという点で、ノーベル賞が国際的な権威をみとめられていることは、誰でも知って・・・ 宮本百合子 「今日の文学と文学賞」
・・・これを無条件に礼讚せざるものは、健全な日本文化人に非ずという強面をもって万葉文学、王朝文学、岡倉天心の業績などが押し出されたのであった。その旗頭としての日本ロマン派の人々の文章の特徴は、全く美文調、詠歎調であって、今日では保守な傾きの国文研・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・それは、偉大で才能ある過去、或は現在のブルジョア作家の一生とそこにのこされている文学的業績とから私達が遺産として価値あるものを獲て行こうと努力する場合、私たちの探求の中心は常にその作家の生活態度の中に現れ、従って各作品に鋭くふくまれて出てい・・・ 宮本百合子 「作家研究ノート」
・・・又偶々所謂興味ある病症を見ても、それを研究して書いて置いて、業績として公にしようとも思わなかった。勿論発見も発明も出来るならしようとは思うが、それを生活の目的だとは思わない。始終何か更にしたい事、する筈の事があるように思っている。しかしその・・・ 森鴎外 「カズイスチカ」
・・・従ってまた人類の有史以来数千年の業績をも、しみじみと自己の問題として回顧せしめる。この事がもしある芸術的天才の心裡に起こったならば、そこに何らか雄大な結晶物が生まれないではいないだろう。 考えてみると、古来の芸術的傑作には戦争に刺激せら・・・ 和辻哲郎 「世界の変革と芸術」
出典:青空文庫