・・・その頃から、本年八月迄、十四年の間、日本の婦人運動は辛うじて母子保護法を通過させたのみで、炭鉱業者が戦時必需の名目で婦人の坑内深夜業復活を要求したのに対し、何の防衛力ともなり得なかった。婦人の政治参加の問題どころか、戦争に熱中した政府は戦争・・・ 宮本百合子 「現実に立って」
・・・日配の解体、再編成は、集中排除法という経済面から強行されて、三ヵ月以上にわたった出版界の経済封鎖の過程では、大出版企業者をのぞく、すべての出版事業がいちじるしい危機にさらされた。こんにち揺がない大出版企業の代表者たちが、文化上どのような性質・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・ 一、以上に述べたような経済事情の悪化は、小規模な出版業者の没落と、没落しまいとするもがきから一層粗悪なエロ・グロ出版を行わせる結果になった。日本出版協会は、日本民主化のために有益な出版を鼓舞しようとするたてまえから、さる六月エロ・・・・ 宮本百合子 「今日の日本の文化問題」
・・・ 数年来云われて来たインフレ出版の現象は、急速な社会全般の情勢のうつりかわりとともにこれ迄の文化伝統が変動しつつあることの一つの相貌として、云ってみればこれ迄出版業者にとって未開拓の地であった女性の世界へ次第に進出して来たのだと思える。・・・ 宮本百合子 「女性の書く本」
・・・現在十五歳から二十位迄の若い女を八万人ばかり働かし、その八一パーセントを寄宿舎に住わせ、手取二四八円九五銭――三〇四円九二銭の奴隷賃金でしぼっている業者はこの要望に対して早速生産低下で抵抗を示している。 日本資本主義は「女工哀史」の上に・・・ 宮本百合子 「その檻をひらけ」
・・・が説明によって理解したところでは、民主革命の推進力である労働者階級を主軸としてその同盟者としての農民、勤め人、中小商工業者、近ごろはアルバイトの必要から勤労生活にとけこみつつある学生、これらを概括して「勤労者文学」の基盤とするといわれたよう・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・この委員会の2/3は業者の代表でした。1/3が文学者、教育家、図書館関係者でした。小林珍雄氏、日比谷図書館長、山室民子氏、わたくしなどでした。 その後、この委員会は、ひろく人を集めることをやめ、わたしの出席する場合もへり、やがて、どうな・・・ 宮本百合子 「「チャタレー夫人の恋人」の起訴につよく抗議する」
・・・ バルザックの小説を読むと、ヨーロッパの近代文学の作家たちはあくのつよい近代出版業者たちと日夜もみ合いながら、上向する社会全般の経済関係の中で、互に勁くなって来ているように思える。文学者の力量は文学者として十分生活上の経済的基盤を与える・・・ 宮本百合子 「春桃」
・・・人民の経済生活は極めて危機に瀕しているから、もう一二ヵ月もすれば出版物に対する購買力も低減するだろうからという見越しで、すべての出版業者が、せき立ち焦っているのも、結構と思う。わたし達は、自身が餓えつつあるとき、せめては何が故に、自分達はこ・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
・・・フランス全国の同業者等は、この唐突に現れた資本も少ない若年の一出版業者が、疑なく時流に投じるであろう出版計画をもっていることを見極めると、共通な悪計によって結束した。一万フランの資本をかけて出版した本の売上げが、一年にやっと二十部という目に・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
出典:青空文庫