・・・「文化の様相を決定するのは生産力である」という社会の事実である。 さて、前述のように、人間社会の生産力の発達につれて、今日まで発達して来た文化をおおまかにさかのぼってみると、まず始めに原始的文化があり、古代的、封建的文化の時代を経て・・・ 宮本百合子 「今日の文化の諸問題」
・・・その市民としての生活感情が変化したにつれて、文学の精神も表現も、それまでの様相をかえた。 第二次大戦は、更に大規模な破壊と変貌とを地球の上にひきおこした。世界の文学には、第一次大戦ののちとは比較にならない根本的な変化がもたらされつつある・・・ 宮本百合子 「「下じき」の問題」
・・・そして、この言葉から私たちが直感する理性と情感とがとけあってもっとも高い人間性、もっとも複雑な人間社会の諸様相を反映する民主的な文化を意味するならば、日本の私たちの今日の現実のどこにそのような「正しい文化」があるでしょう。まじめな人びとは、・・・ 宮本百合子 「質問へのお答え」
今年の文学ということについて大略の印象をまとめようとすると、一つの特徴的な様相がそこに浮んで来るように思う。 それは作品と作家との間に生じた問題とも云える種類のものである。私たちが偏らない心で今年の文学を思いかえしたと・・・ 宮本百合子 「昭和十五年度の文学様相」
・・・ 今日の社会の一つの様相として起ったこの事柄の本質は、決して一人の学生を叱りとばしたことで前進もしなければ解決もしまい。たまの休日は家へかえって本を読め、ということに対して、学生が反駁する心持も一般人の心として、十分肯けるものがあると思・・・ 宮本百合子 「「健やかさ」とは」
・・・にして既成作家のカムバックということにしても文学的カムバックが比較的少なくて、ジャーナリスティックなカムバックが主流をなしているその事実は、さきにふれたように日本の民主主義の今日における一つの特色ある様相です。作家自身としての問題、文学の問・・・ 宮本百合子 「一九四六年の文壇」
・・・二・二六事件をさしはさんで、ファシズムと戦争に洗われる上流生活の様相と、その中におのずから発展を探る若い世代の歴史的道ゆきを辿ろうとされている。 野上彌生子の理性的な創作方法とはちがって、はるかに素朴な生活力ながら、やはり調べた題材によ・・・ 宮本百合子 「婦人作家」
・・・現世紀の社会歴史の発展は、あらゆる段階とそれに応じた様々の様相を通じて、労働者階級がその主導的な力であることは、世界の事実となっている。そのような階級の力として日本に労働者階級があり、その階級の人間的表現としての文学運動があらわれたとき、そ・・・ 宮本百合子 「プロレタリア文学の存在」
・・・批判の精神が人間精神の不滅の性能であることやその価値を承認することは、とりも直さず客観的観照の明々白々な光の下に自身の自我の転身の社会的文学的様相を隈なく曝すことになり、それは飽くまで主観的な出発点に立っている精神にとって決して愉快なことで・・・ 宮本百合子 「文学精神と批判精神」
・・・大人は自分たちの十代をかえりみたとき、とかく、わたしがそのくらいの年ごろだった頃には、と、少年少女としての自分がおかれていた境遇と、それにつれて現在では物語めいて変化しているその時代の様相を想い起す場合が多いらしい。 そして多くの場合、・・・ 宮本百合子 「若い人たちの意志」
出典:青空文庫