・・・ 四三 発火演習 僕らの中学は秋になると、発火演習を行なったばかりか、東京のある聯隊の機動演習にも参加したものである。体操の教官――ある陸軍大尉はいつも僕らには厳然としていた。が、実際の機動演習になると、時々命令に間・・・ 芥川竜之介 「追憶」
・・・継承して兵站線の尾を蜒々と地上にひっぱり、しかもそれに加えて傷病兵の一群をまもり、さらに惨苦の行動を行っているのにくらべて、アメリカの近代科学性は、航空力によって天と地との間に立体的桶をつくり、立体的機動性をもって敏速に、生命の最小犠牲で戦・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・たがいの癖となってしまっているとき、にわかにぱっと窓があいて、光線が一時にさしこんできたとき、火花のようだった符号を朗々とした全文に吐露しなおし、それを構成して、たちどころにそれをひろくつたえるという機動性が、身に備っていただろうか。 ・・・ 宮本百合子 「現代の主題」
・・・ ジェスチュアでない世界平和と民主的社会の建設のために誠実な努力をつづけている世界のすべての人がMRAの本体を見きわめているこんにち、片山哲氏が大財閥の三井一門とコーでもてなされて「MRAの機動部隊を日本に派遣されたい」と切望しているの・・・ 宮本百合子 「再武装するのはなにか」
・・・わたしのあの話の十一頁十二頁とよめば、キドウ性は機動性であることが察しられないことはないと思う。少くとも、これは変だ、と思われたにちがいない。変だと思うとき、ひとは、それが変だからこそ、誹謗に都合がよいとして、それをつかうだろうか。――まし・・・ 宮本百合子 「孫悟空の雲」
・・・この発言の本質は、先程の作家と人民層とのより緊密なむすびつきを求めていることだと思いますが、発言の中にもあったように、サークルその他へ作家がもっとまめに出席するような機動性が求められていることでもあります。もう一歩深めてこの問題を考えると、・・・ 宮本百合子 「討論に即しての感想」
・・・ 一人の文学を愛する労働者が、いつもより本質的に人生の波を感じとる人として、またそれを再現する人として自分を分裂させずにあらゆる場面を生きとおしてゆくということ、そのように機動的な文学性をきたえてゆくということ、これが人民の文学の新しい・・・ 宮本百合子 「平和運動と文学者」
・・・マの進展のモメントとなる各細部を、印象的に整理してゆく方法だけに頼らず、もっと深く本質にふれて、占領地域におけるナチス軍の窮極における敗退の生活的・心理的な理由を、政治的にしっかり把握した上で、政治的機動性とでもいうようなダイナミックな力で・・・ 宮本百合子 「よもの眺め」
・・・種子島へ来た鉄砲をどっさり買い込んで、自分の歩兵を武装させ機動的な戦争の方法を組織したのは信長であった。信長が、分裂していた支配権力を一応自分に集中することが出来たのは、彼の賢によってであった。彼がポルトガルから渡来した近代武器の威力を理解・・・ 宮本百合子 「私たちの建設」
出典:青空文庫