・・・不幸にして現在の録音機と発声マイクロフォンとはその機巧のいまだ不完全なために、あらゆる雑音の忠実な再現に成功していない。それで、盲者が、話し声の反響で室の広さを判断しうるような微妙な音色の差別を再現することはまだできないのであるが、それにも・・・ 寺田寅彦 「映画芸術」
・・・やはり、音の生成機巧に共通なところがあるからであろう。すなわち、浜べで無数の砂利が相打ち相きしるように無数の蝗の羽根が轢音を発している、その集団的効果があのように聞こえるのではないかと思われる。そういえば丸鋸で材木をひく時にもこれに似た不規・・・ 寺田寅彦 「映画雑感(1[#「1」はローマ数字、1-13-21])」
・・・そのほんとうの原因的機巧はまだよくわからないが、要するに物理的には全くただ小規模の地震であって、それが小局部にかつ多くは地殻表層に近く起こるというに過ぎないであろうと判断される。 もし「孕のジャン」として知られた記録どおりの現象が、実際・・・ 寺田寅彦 「怪異考」
・・・しかしまねしたくてもこれら植物の機巧はなかなかむつかしくてよくわからない。人間の知恵はこんな些細な植物にも及ばないのである。植物が見ても人間ほど愚鈍なものはないと思われるであろう。 秋になると上野に絵の展覧会が始まる。日本画の部にはいつ・・・ 寺田寅彦 「からすうりの花と蛾」
・・・しかし真似したくてもこれら植物の機巧はなかなか六かしくてよく分らない。人間の智慧はこんな些細な植物にも及ばないのである。植物が見ても人間ほど愚鈍なものはないと思われるであろう。 秋になると上野に絵の展覧会が始まる。日本画の部にはいつでも・・・ 寺田寅彦 「烏瓜の花と蛾」
・・・ この火山の機巧の秘密を探ろうと努力している多くの熱心な元気な若い学者たちにきわめて貴重なデータを供給するために、陸地測量部の人たちが頻繁な爆発の危険に身命をさらしながら爆発の合い間をねらっては水準測量をしている。その並み並みならぬ労苦・・・ 寺田寅彦 「小浅間」
・・・しかし、グリーンホテルを緑屋などと訳してみた覚えは全然ないのであるが、いつか一度ぐらいひょっとそんな事を考えてそれきり忘れていたのが夢という現象の不思議な機巧によって忘却の闇の奥から幻像の映写幕の上に引き出されたのではないか、そうとでも考え・・・ 寺田寅彦 「三斜晶系」
・・・ しかし如何なる機巧でその火山のその時の活動が起ったか、また如何なる力の作用でその地辷りを生じたかを考えてみる事は出来る。これに対する答としては更に色々な学説や臆説が提出され得る。これが源因の第二段階である。例えば地殻の一部分にしかじか・・・ 寺田寅彦 「地震雑感」
・・・自分もかつて、砂層の変形の繰り返しによって生ずる週期的すべり面の機巧から推して、単晶体の週期的すべり面の機巧を予想してみたこともあったが、これとても決して充分だと思われない、最近にガラス面に沿うて電気火花を通ずる時にその表面にできる微細な顕・・・ 寺田寅彦 「自然界の縞模様」
・・・灰の微粒と心核の石粒とでは周囲の気流に対する落下速度が著しくちがうから、この両者は空中でたびたび衝突するであろうが、それが再び反発しないでそのまま膠着してこんな形に生長するためには何かそれだけの機巧がなければならない。 その機巧としては・・・ 寺田寅彦 「小爆発二件」
出典:青空文庫