・・・民主なる文学ということは、私たち一人一人が、社会と自分との歴史のより事理にかなった発展のために献身し、世界歴史の必然な働きをごまかすことなく映しかえして生きてゆくその歌声という以外の意味ではないと思う。 そして、初めはなんとなく弱く、あ・・・ 宮本百合子 「歌声よ、おこれ」
・・・ 若い少女たちが、その歌声の澄みわたった響で太陽の光線を美しく顫わすように、疲れ、鈍らせられていない良心の流露で、誇りたかく生きる道を進んで行ったら、其姿は、優しくひるむことない進歩の旗じるしとなると思います。〔一九四五年十二月〕・・・ 宮本百合子 「美しく豊な生活へ」
・・・ その家のわきを通るとその娘の笑う高い声や戯言を云うのがきこえ夜の静かな中に高くて細い歌声がこまかくふるえて遠くまでひびいて居る事もあった。 高い張った声とはっきりした身なりは仙二がどうしても忘れる事は出来なくなった。 一言自・・・ 宮本百合子 「グースベリーの熟れる頃」
・・・ 第十三回革命記念日の数日前、一九三〇年十一月一日の朝、モスクワの白露バルチック線停車場は鳴り響く音楽と数百の人々が熱心に歌うインターナショナルの歌声で震えた。各国からの代表、歓び勇んでやって来たプロレタリア作家たちの到着だ。みんなは、・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・「歌声よ、おこれ」以下、この本の前半にあつめられた評論は、それぞれの角度から、日本のすべての人がおかれた非人間的なきのうをかえりみ、きょうを眺め、明日の可能を歴史の現実のうちに発見しようとしたものである。文学を中心として語られているけれ・・・ 宮本百合子 「序(『歌声よ、おこれ』)」
・・・それから、メーデーに勤労者は自分たちの意志と希望とを表現するものであるということを、その歌声の響のなかにもはっきり示した去年のメーデーの雰囲気。今年五月一日に、私たちみんなはどんなこころで、町から村から工場から、と歌うのだろう。 真面目・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
・・・が、一つの瞬間、そういう言葉の差別は急に溶けて一かたまりの焔のような歌声に盛りあがった。それは、これらの人々が、――インターナショナルとともに!と歌ったときだった。 ハリコフに於けるこの国際革命作家大会には、松山という日本からの・・・ 宮本百合子 「ソヴェト文壇の現状」
・・・若々しく楽しい歌声はドアをしめても廊下へあふれてきこえる。その歌声をききながら、向い合いの室では「新聞」編輯だ。一人がルバーシカの襟をひらいて一生懸命モスクワ発行の『プラウダ』から何か論説をやさしく大衆向きに書き直している。鋏で切抜きをやっ・・・ 宮本百合子 「ドン・バス炭坑区の「労働宮」」
・・・十二月に新しい日本の民主的文学へのよびかけとして「歌声よおこれ」を新日本文学創刊号のために書いた。近代文学のために「よもの眺め」を書いた。主としてジュール・ロマンの「ヨーロッパの七つの謎」の書評であり、資本主義国家が第一次大戦後欧州の社・・・ 宮本百合子 「年譜」
・・・限りまでなされて文を送った婦人の門にパンのかけらをほおばりなされたり、歌う声をよくしようとて滝壺に座って歌ってござるうちに目がまわってそのままどこに行かれたか先のわからぬ様になられたも、フトもれきいた歌声とチラとかい間見た後姿に命がけでしの・・・ 宮本百合子 「胚胎(二幕四場)」
出典:青空文庫