・・・だという正誤を申込まれた。その子供の話によると、「ワシントン」という靴屋を間違えて「ナポレオン」と云った友達がいるそうである。しかし雀と鴨では少し大きさが違い過ぎると云って笑った。雀の宮は日光の近くにあったのである。 小田原ではバスが待・・・ 寺田寅彦 「箱根熱海バス紀行」
・・・したがって私にこの正誤を書かせるのもその戦争である。つまり戦争が正直な二人を嘘吐きにしたのだといわなければならない。 しかし先生の告別の辞は十二日に立つと立たないとで変わるわけもなし、私のそれにつけ加えた蛇足な文句も、先生の去留によって・・・ 夏目漱石 「戦争からきた行き違い」
・・・その中に正誤表を作った事や、象嵌で版型を改めた事を言った。然るにその正誤表がまだ世間に行き渡っていない。そこで正誤表を作ったと云うのは虚言だと云う人がある。あれは虚言ではない。正誤表は先ず第一部のが出来て、多少世間に出ている。次いで第二部の・・・ 森鴎外 「不苦心談」
・・・ 訳本ファウストにはまだ正誤が公にして無い。しかし出来てはいる。あの本を発行している書肆富山房は初第一部を千五百部印刷して神田の大火に逢った。その時千部は焼けて五百部残った。幸な事にはまだ紙型が築地の活版所から受け取って無かったので、こ・・・ 森鴎外 「訳本ファウストについて」
出典:青空文庫