・・・国文学研究の正道に立って、古典が文学外の力に利用されることに疑義を挾むぐらい、真に気魄をもって国文学を研究する人は尠い。明治以来今日迄のヨーロッパ文学研究の盛んなのとその影響力に対して、或る種の国文学研究者は、自身の態度として、反動である可・・・ 宮本百合子 「文学上の復古的提唱に対して」
・・・それに対してリアリズムを芸術の正道と信じている人々は、何も写実が今日のリアリズムではないと迄は云うけれど、では、どういうのが目ざされているリアリズムかというと、それを短くはっきり定義づけることには困難が感じられているようだ。 リアリズム・・・ 宮本百合子 「リアルな方法とは」
・・・元服して正道と名のっている厨子王は、身のやつれるほど歎いた。 その年の秋の除目に正道は丹後の国守にせられた。これは遙授の官で、任国には自分で往かずに、掾をおいて治めさせるのである。しかし国守は最初の政として、丹後一国で人の売り買いを禁じ・・・ 森鴎外 「山椒大夫」
出典:青空文庫