・・・そしてそれらの国の果て果てで、平和な生活の中では勤勉な市民であり、思いやりのある若者たちでもあった数十・数百万の人々が、軍の力で気を狂わせられていなかったら、決して行わなかった残虐の数々を強いられました。その軍隊が壊滅した時、軍隊は同じその・・・ 宮本百合子 「新しいアジアのために」
・・・その一方、戦犯被告と捕虜に対する残虐行為の裁判は続行されています。この面こそ強調されるべきです。 歴史はくりかえすものではありません。全く同一の現象が、同一の内容でくりかえされることは歴史上ないことです。まして、歴史は決してそのままのく・・・ 宮本百合子 「新しい卒業生の皆さんへ」
・・・代物である通り、ブルジョア世界観によって偽善的に、甘ったるく装われ、その実は血を啜る残虐の行われている「子供の無邪気さ、純真さ」の観念に対してこそ、プロレタリアートは「知慧の始り」である憎悪をうちつけるのではなかろうか。実際の場合に、人道主・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・ きょうより考えれば、あれほど残虐非道な治安維持法を嫌悪し、恐怖し、抵抗を感じるのは、当然だったと思う。人間なら、ああいう非人間的暴力には精神的にも肉体的にも堪えがたいと感じるのはむしろ自然である。しかし、こんにちの私たちにとって、一つ・・・ 宮本百合子 「解説(『風知草』)」
・・・鈴木文史朗という新聞記者だったものがアメリカまで行ったあげくなおこういうものいいをするぐらいなのだから、日本人の残虐性は根づよいと思わずにいられまい。広島の平和都市、長崎の国際都市建設案を、議会満場一致で賛成、感謝したところで、民間人の代表・・・ 宮本百合子 「鬼畜の言葉」
・・・ファシズムによる第二次大戦は、破壊の残虐と痛苦で人類の心臓を出血させた。そして、きょうになってみれば、生命を奪われ生活を破壊されたものは、どこの国においても人民の老若男女、子供であったことが、いよいよ明瞭である。 日本のなかでの帝国主義・・・ 宮本百合子 「五〇年代の文学とそこにある問題」
・・・いま公判がひらかれている吉村隊長が、外蒙の日本人捕虜収容所のボスとして行った残虐と背徳行為が社会問題化したのは、「暁に祈る」という怪奇なテーマをもつ記録文学がいくとおりか発表され、輿論の注目をひいたためであった。現地の軍当局の信じられないほ・・・ 宮本百合子 「ことの真実」
・・・だが、彼等が、食うものがないからと云って、子供に対して非人間的な残虐に立ち到った、その心理の根底には、単なる飢えにたけりたったとはちがった、何か、云うに云えない心の廃墟があったのではなかろうか。つまりより飢えなかったとき、既に畜生道に陥る精・・・ 宮本百合子 「逆立ちの公・私」
・・・権力とその結托者たちの残虐性によって、どのような孤立におかれようとも、世界の人民としての階級連帯の感覚、その文学としての人民としての人民的世界性を見失わない一個の階級人として構成された存在、その方向へ自主的に発展してゆく可能を与えるものであ・・・ 宮本百合子 「しかし昔にはかえらない」
・・・この論法をもってすれば、同志小林が残虐きわまる拷問にあいつつ堅忍不抜、ついにボルシェヴィキの党派性を死守して英雄的殉難を遂げたそのボルシェヴィクの最後の積極性が発揮された時こそ、同志小林は最も偏狭であったということになるのだ。 同志小林・・・ 宮本百合子 「同志小林の業績の評価に寄せて」
出典:青空文庫