・・・普通法衙の苟も為さざる所也。普通民法刑法の苟も許さざる所也。 而も赳々たる幾万の豼貅、一個の進んでドレフューの為めに、其寃を鳴し以って再審を促す者あらざりき。皆曰く。寧ろ一人の無辜を殺すも陸軍の醜辱を掩蔽するに如かずと。而してエミール・・・・ 幸徳秋水 「ドレフュー大疑獄とエミール・ゾーラ」
・・・是れも至極尤なり。民法親族編第七百七十一条に、子カ婚姻ヲ為スニハ其家ニ在ル父母ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス但男ハ満三十年女ハ満二十五年ニ達シタル後ハ此限ニ在ラスとあり。婚姻は人間の大事なれば父母の同意即ち其許なくては叶わず、なれど・・・ 福沢諭吉 「女大学評論」
・・・只これを心に蓄うるのみにして容易に発せず、以て時機の到来を待ちたりしに、爾来世運の進歩に随い人の心も次第に和ぐと共に、世間の観察議論も次第に精密に入るの傾きある其中にも、日本社会にて空前の一大変革は新民法の発布なり。就中親族編の如きは、古来・・・ 福沢諭吉 「新女大学」
・・・ こうして、各面で婦人の参加が積極的な、重大な意味をもって来るとき、日本の民法が主婦を、無能者ときめていることは、何たる愚かな滑稽であろう。その無能力者を、刑法では、そう認めず、処罰にあたっては、忽ち同一の主婦が能力者として扱われるとい・・・ 宮本百合子 「合図の旗」
・・・ しかし婦人が人民としての生活の中では性別如何にかかわらず法律の前に平等であると考えられるようになったことは、民法も改正して、あのおそろしい、妻の「無能力者」をなくするようになったし、男の子と女の子と財産に対する平等の権利も認められるよ・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・日本の民法が、法律上における婦人の無能力を規定している範囲は、何とひろいことだろう。女子は成年に達して、やっと法律上の人格をもつや否や、結婚によって「妻の無能力」に陥ってしまう。婦人が人間として能力者である時間は、特別な結婚難の時代のほかは・・・ 宮本百合子 「石を投ぐるもの」
・・・この頃いろいろなことで、女子が出ても、選挙の問題や婦人の問題ばかりでなく、刑法・民法のように、まだまだ差別のあることを御承知でしょうし、婦人は公民権をもっておりませんし、代議士になって、いろいろよい施策をやるとしても、いろいろな役割をするに・・・ 宮本百合子 「幸福について」
・・・ますし、お菊みたいにお皿が割れたといってお化けになるほどいじめて殺されるほどの目にもあわなければならなかったけれども、明治の世にいくらか近代の国家になりましてから、とにかく法律というものができました。民法とか刑法とか商業に関する法律とかいろ・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・又憲法が改正され、民法改正草案が示され労働基準法が審議されつつあります。旧い封建日本はようよう近代の民主的な人民の生活を持とうとしているようにみえます。社会のあらゆる面での男女の差別待遇は、憲法によって確認された基本的人権における男女の平等・・・ 宮本百合子 「国際民婦連へのメッセージ」
・・・ もしもしお嬢さん、大変古風なおこのみですが、あなたの御盛装が意味しているとおり、民法が昔にかえって、婦人の地位を男子に隷属したものに戻すとしたら、どうお思いでしょうか、と。きかれた娘さんは、きっとしごきの房をはげしくゆるがして、そんな・・・ 宮本百合子 「今年こそは」
出典:青空文庫