・・・これまでは非常に個人的な系統と統一とをもって形づくられていた一人の作家・評論家の読書が、近頃ではその水脈にさしつかえが生じたと共に、社会の大きな動きそのものがおのずからこれまでの読書の埒をはずさせる点もある。大体皆が同じものを読むことが多く・・・ 宮本百合子 「今日の作家と読者」
・・・民文学について様々の論議があるのだが、それを私たちの文学の実感として感じとろうとするとき、この映画についての場合とそっくりそのままではないけれど、どこか共通のような、何となしまだしん底から湧き出て来る水脈に触れていない心持がある。 国民・・・ 宮本百合子 「実感への求め」
・・・その希望と、当時の世界的紛糾動乱の間に歴史の進化してゆく必然の水脈を見出してゆく手がかりとして、一般読書人のため、常識の整理のために執筆された。地球の生成からヴェルサイユ会議にまで及ぶその内容は、各専門部門にそれぞれ専門家の知識が動員されて・・・ 宮本百合子 「世代の価値」
・・・しかし、文学の方でもそうなのですが、その熱心と探究とは、まだほんとうに新しい芸術の水脈にあたっていないような、つまり摸索の形で、追求が受けとられました。 ですから、技術的な細かいことのわからない私たちには、追求のさまざまな現われが、疑問・・・ 宮本百合子 「第一回日本アンデパンダン展批評」
出典:青空文庫