・・・ 僕は河童も蛙のように水陸両棲の動物だったことに今さらのように気がつきました。「しかしこの辺には川はないがね。」「いえ、こちらへ上がったのは水道の鉄管を抜けてきたのです。それからちょっと消火栓をあけて……」「消火栓をあけて?・・・ 芥川竜之介 「河童」
・・・ふさいでしまって暖流が日本海に侵入するのを防いだら日本の気候に相当顕著な変化が起こるであろうということは多くの学者の認めるところである、この一事から考えても日本の気候は、日本のごとき位置、日本のごとき水陸分布によって始めて可能であること、従・・・ 寺田寅彦 「日本人の自然観」
・・・ている陸塊の水平移動に関する学説、俗に大陸漂移論と称するものから見た日本陸地の成立、変化、ならびにこれに連関して問題となるべき陸地の昇降、地震、火山現象等を追究するに当たって、しばしば古い過去における水陸分布の状態と現在のそれとの異同が問題・・・ 寺田寅彦 「比較言語学における統計的研究法の可能性について」
・・・このあたりまで来ると、運河の水もいくらか澄んでいて、荷船の往来もはげしからず、橋の上を走り過るトラックも少く、水陸いずこを見ても目に入るものは材木と鉄管ばかり。材木の匂を帯びた川風の清凉なことが著しく感じられる。深川もむかし六万坪と称えられ・・・ 永井荷風 「深川の散歩」
出典:青空文庫