・・・僕のうちの近くなら洪積と沖積があるきりだしずっと簡単だ。それでも肥料の入れようやなんかまるでちがうんだから。いまならみんなはまるで反対にやってるんでないかと思う。一九二五、十一月十日。今日実習が済んでから農舎の前に立・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・ 道の左には地図にある通りの細い沖積地が青金の鉱山を通って来る川に沿って青くけむった稲を載せて北へ続いていた。山の上では薄明穹の頂が水色に光った。俄かに斉田が立ちどまった。道の左側が細い谷になっていてその下で誰かが屈んで何かしていた。見・・・ 宮沢賢治 「泉ある家」
・・・あすこは古い沖積扇です。運ばれてきたのです。割合肥沃な土壌を作っています。木の生え工合がちがって見えましょう。わかりましょう。〕わかるだろうさ。けれどもみんな黙って歩いている。これがいつでもこうなんだ。さびしいんだ。けれども何でもないんだ。・・・ 宮沢賢治 「台川」
出典:青空文庫