・・・僕が今住んで見たいと思うのはソヴィエット治下の露西亜ばかりだ。」「それならば露西亜へ行けば好いのに。君などはどこへでも行かれるんだろう。」 彼はもう一度黙ってしまった。それから、――僕は未だにはっきりとその時の彼の顔を覚えている。彼・・・ 芥川竜之介 「彼 第二」
・・・では、ナチス治下の教育が、どんなにドイツの少年たちを毒しているかをあからさまにしたもので、映画化され、世界に深甚な影響をあたえた。エリカ・マンはまた子供のための冒険物語「シュトッフェルの海外旅行」をも書いているそうである。 ナチス・ドイ・・・ 宮本百合子 「明日の知性」
・・・独善的に民族の優越性や民族文化を誇張したファシズム治下の国々が、ほかならぬその母胎である女性の性を、売淫にさらしていることはわたしどもになにを語る事実であるだろうか。 ところが、昨今の日本の文化は、自国の社会生活の破壊の色どりである売笑・・・ 宮本百合子 「偽りのない文化を」
・・・ 日独協定が行われて略一ヵ年を経た本年下四期に日伊協定が結ばれ、南京陥落の大提灯行列は、大本営治下の各地をねり歩いた。十二月二十四日開催の第七十三議会に先立つこと九日の十五日に日本無産党・全評を中心として全国数百人の治維法違反容疑者の検・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・猿面冠者の立身物語は、そのような立身をすることのない封建治下の人民に、人間的あこがれをよびさますよすがであった。自分の生涯にはない、境遇からの脱出の物語だった。太閤記と云う名をきいただけで、日本の庶民の伝承のうちにめをさます予備感情がある。・・・ 宮本百合子 「その柵は必要か」
・・・この一つの雑誌に、「スタアリン治下の文学と作家生活」という座談会記事があり、ユウジン・リオンスという人の「ソヴィエトの作家」という文章があり、創作の頭には勝野金政という人物の「モスクワ」という二百五十枚の小説がのっている。 アグネス・ス・・・ 宮本百合子 「近頃の話題」
出典:青空文庫