・・・連歌に始まり俳諧に定まった式目のいろいろの規則は和声学上の規則と類似したもので、陪音の調和問題から付け心の不即不離の要求が生じ、楽章としての運動の変化を求めるために打ち越しが顧慮され去り嫌い差合の法式が定められ、人情の句の継続が戒められる。・・・ 寺田寅彦 「俳諧の本質的概論」
・・・「紅雨の最も感動したのは、かの説明者が一々に勿体つける欄間の彫刻や襖の絵画や金箔の張天井の如き部分的の装飾ではなくて、霊廟と名付けられた建築とそれを廻る平地全体の構造配置の法式であった。先ず彎曲した屋根を戴き、装飾の多い扉の左右・・・ 永井荷風 「霊廟」
・・・きさまは決闘の法式も知らんな。」「よし。酒を呑まなけぁ物をいえないような、そんな卑怯なやつの相手は子どもでたくさんだ。おいファゼーロしっかりやれ。こんなやつは野原の松毛虫だ。おれがうしろで見ているから、めちゃくちゃにぶん撲ってしまえ。」・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・とはっきり云われると私は切ないからもうこういう法式で自分がかくことにしました、あなたにだけは。用足し手紙は仕方がないが。 寿江子の体いろいろありがとう。 こうやってチラチラと定まらない視線の間から、段々に少しずつ字も書いて行くのがい・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・戦時利得税をいずれ払わなくてはならず、しかも、大財閥に対してのように、政府が様々の法式を考案して、とり上げた金をまた元に戻してよこしてくれる当もない。戦時成金ばかりが、昨今、使ってしまえという性質の金銭をちらしているのである。 つい先頃・・・ 宮本百合子 「人民戦線への一歩」
・・・一九一四―一九一八年の第一次世界大戦、それから二十五年たって起った第二次世界大戦を経験し、いくら戦争をやったところで、現在のままの法式では経済矛盾、社会矛盾を解決しないことを痛感しているヨーロッパ、アメリカ及び東洋の勤労階級は、ほんとに、世・・・ 宮本百合子 「正義の花の環」
出典:青空文庫