・・・それは雑音の中に含まれるいろいろな波長の音波が、それぞれ回折や分散の模様のちがうために起こる現象である。 トーキーの場合には、実際の音の音色は決してそのままに記録され複製されない。それは録音ならびに発音器械の不完全から来る欠点である。そ・・・ 寺田寅彦 「耳と目」
・・・ロェンチェン線の発見が学界を驚かしたのはその波長が幾オングストロェームあったためではなく、そういうものが「在る」ということであった。ベクレル線も同様であった。シー・ティー・アール・ウィルソンの膨張箱の実験が画期的であったゆえんはまず何よりも・・・ 寺田寅彦 「量的と質的と統計的と」
・・・一方、私共の眼に感ずる光の波長は、 〇、〇〇〇七六粍 乃至 〇、〇〇〇四 粍 (菫 ですからこれよりちいさなものの形が完全に私共に見えるはずは決してないのです。また、普通の顕・・・ 宮沢賢治 「手紙 三」
・・・一貫した生活のトーンで、私の生活の波長をはっきりお感じになるというのは、私にもわかる。そして、私は、はっきりそのことを感じてもいるのです。私の生活の響が応えられていることを。 さあ、本当にこうしていないで髪を洗わなければ。さっきの手紙を・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・特定の波長に対しては特定の検波器がある。電波に関するこの中学生的常識は、文学における原作者と翻訳者との関係にも極めて自然に適用される。すなわち、私はこれだけのことを云いたい。私は訳者を識っている。平常着のままでよろこんだり、むずかったり、癇・・・ 宮本百合子 「シナーニ書店のベンチ」
・・・固定させて、それぞれの聴取目的の波長にやや合わせて、幾つかをきめて切り替えて行くスウィッチならば、相当の性能をもつということである。その他、絶縁体の質の問題とかもあるときいた。 一言にして云えば、全波が聴ける、という声、聴きたいという欲・・・ 宮本百合子 「みのりを豊かに」
出典:青空文庫