・・・彼の周囲の生活の中には、泥酔や喧嘩や醜行やが終りのない堂々めぐりで日夜くりかえされているのだが、それらすべては何のために在るのだろう。 当時、ゴーリキイは、汽船の料理番スムールイに読むことをおそわった。初めはマカロニ箱にこしかけて、『ホ・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの発展の特質」
・・・彼の周囲に充満しているのは無智やあてのない悔恨や徒食、泥酔、あくまで互にきずつけ合う残酷などであるのに、彼が読む本は何と人間の智慧の明るさ、生活の美などについて語っていることであろう。当時のロシアをみたしていた生活の浪費の苦痛がゴーリキイの・・・ 宮本百合子 「マクシム・ゴーリキイの人及び芸術」
・・・ 彼のまわりはどっちを見ても無智と当てのない悔恨、泥酔、飽き飽きする程お互に傷け合うような惨酷さが充満している。それだのに彼の読む本は何と人間の尊厳、発展の可能、真理の強さについて語っていることだろう。ゴーリキイは遂にカザン市に行って、・・・ 宮本百合子 「逝けるマクシム・ゴーリキイ」
・・・生れつき屈辱に対して敏感であり、人間生活の明るさ美しさをもとめていた若いゴーリキイが現実生活の中で日夜自分の周囲にみるのは当時のロシアの民衆がおかれていた無智と泥酔と、おびただしい才能の浪費とであった。 彼はそれらのものとその性根におい・・・ 宮本百合子 「私の会ったゴーリキイ」
出典:青空文庫