・・・それで僕も色々と想像を描いていたので、それを恋人と語るのが何よりの楽でした、矢張上村君の亜米利加風の家は僕も大判の洋紙へ鉛筆で図取までしました。しかし少し違うのは冬の夜の窓からちらちらと燈火を見せるばかりでない、折り折り楽しそうな笑声、澄ん・・・ 国木田独歩 「牛肉と馬鈴薯」
・・・この時に全部の手術を受け持ってくれたF学士に抜歯術に関する力学的解説を求められたので、大判洋紙五六枚に自分の想像説を書きつけてさし出したのであった。それはいいかげんなものであったろうが、しかしこうした方面にも力学の応用の分野があることを知っ・・・ 寺田寅彦 「自由画稿」
・・・わたくしは白山の通りで、この車が洋紙をきんさいして王子から来るのにあうことがある。しかしそういうときにはこの車はわたくしの目にとまらない。 わたくしはこの車が空車として行くにあうごとに、目迎えてこれを送ることを禁じ得ない。車はすでに大き・・・ 森鴎外 「空車」
出典:青空文庫