・・・「流血の検挙をよそに闇煙草は依然梅田新道にその涼しい顔をそろへてをり、昨日もまた今日もあの路地を、この街角で演じられた検挙の乱闘を怖れる気色もなく、ピースやコロナが飛ぶやうに売れて行く。地元曾根崎署の取締りを嘲笑するやうに、今日もま・・・ 織田作之助 「大阪の憂鬱」
・・・全課程を冒険者や流血者の行列にしないために発明家や発見家も入れてもらいたい。」 歴史の時間の一部を割いて、実際の国家組織に関する事項、社会学や法律なども授けてはどうかという問に対してはむしろ不賛成だと答えている。彼自身個人としては公生活・・・ 寺田寅彦 「アインシュタインの教育観」
・・・それに対して、ヨーロッパは、自身の流血をもって闘った。第二次世界戦争の結果は、こういう意味で、疑いなくこれからのヨーロッパ文化を或る程度まで変えようとしているのである。 日本では、この間の事情が大分、異っていると思う。 第一、封建時・・・ 宮本百合子 「木の芽だち」
・・・ 三位一体は大資本、法王、軍閥で、祝福の代りに大衆の疲弊と流血があるだけだ。 一九三〇年、革命劇場上演の「第一騎兵隊」は、一九一七年――一九二〇年の国内戦の歴史、第一騎兵隊の功績を芸術化するばかりではない。帝政時代のロシア兵営内の生・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・そしてその結果、世界は自身の流血の上に立って、国際間の諸矛盾を解決するために戦争というものは再び繰返されるべきものでないということを学んだ。日本も同じ大きな道を辿って同じ結論に到達している訳ではあるが、然しこの過程には世界に類の無い日本の若・・・ 宮本百合子 「青年の生きる道」
・・・「三鷹電車区の中には、たとえかけだしの党員でも年が若くてもマルクス・レーニン主義を充分知らなくても、構内に入っている電車を暴走させて人の命を奪って、これで日本の流血革命だなどといって手を叩いてよろこぶような若者はいない。三鷹電車区の細胞には・・・ 宮本百合子 「それに偽りがないならば」
・・・バルザックはパリの階級勢力の移動と栄枯盛衰がその間に激しく行われた七月、二月の政変をも経験したのであったが、彼は社会的変革も要するに金をめぐってもがく人間の流血的な循環運動にすぎぬと、観たのであった。 それにつけて私共の思い出すのは、バ・・・ 宮本百合子 「バルザックに対する評価」
・・・れた素材を、それをこそわが文学の世界として渉猟しているのであるが、甚だ興味あることは、彼自身時代のディフォーメイションを内在物としてもちつつ社会関係の中では、そのことからの損傷の被害者の立場にありその流血的な日夜から彼の文学は遂に馴れ合い以・・・ 宮本百合子 「文学のディフォーメイションに就て」
・・・現実での暴虐、流血を神秘主義に色どって、その強烈さで、理性を麻痺させることは、ヒトラーの方式であった。その拙劣な真似に、日本の軍部の方式があった。「暁に祈る」が、その名称そのもので実証した。 黄色い特派員 ・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・ スペインが流血の苦難を通じて世界文化・文学の領域の中に新しい自身の価値を創造しつつ、同時にヨーロッパの文化的良心の沸騰する発露、更新力となりつつあることを疑うものは今日いないのである。『文芸』の「現在中国文学界鳥瞰図」「抗日作・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
出典:青空文庫