・・・後に母の母が同棲するようになってからは、その感化によって浄土真宗に入って信仰が定まると、外貌が一変して我意のない思い切りのいい、平静な生活を始めるようになった。そして癲癇のような烈しい発作は現われなくなった。もし母が昔の女の道徳に囚れないで・・・ 有島武郎 「私の父と母」
・・・ただそれに即して直ちに念仏のこころがあればいいのである。浄土真宗の信仰などはそれを主眼とするのである、信仰というものをただ上品な、よそ行きのものと思ってはならない。お寺の中で仏像を拝むことと考えては違う。念仏の心が裏打ちしていれば、自由競争・・・ 倉田百三 「女性の諸問題」
・・・お寺は、浄土真宗である。親鸞上人のひらいた宗派である。私たちも幼時から、イヤになるくらいお寺まいりをさせられた。お経も覚えさせられた。 × 私の家系には、ひとりの思想家もいない。ひとりの学者もいない。ひとりの芸術家も・・・ 太宰治 「苦悩の年鑑」
・・・当時の宗教としては、禅宗や浄土真宗や日蓮宗などが最も有力であった。しかし日本の民衆のなかに、苦しむ神、死んで蘇る神というごとき観念を理解し得る能力のあったことは、疑うべくもない。そういう民衆にとっては、キリストの十字架の物語は、決して理解し・・・ 和辻哲郎 「埋もれた日本」
出典:青空文庫