・・・となり、日本浪漫派の人々は亀井勝一郎、保田与重郎、中河与一を先頭として「日本精神」の謳歌によって文飾されたファシズム文学を流布した。女詩人深尾須磨子はイタリーへ行って、ムッソリーニとファシズムの讚歌を歌った。私は目白の家で殆ど毎日巣鴨へ面会・・・ 宮本百合子 「年譜」
時局と作家 浪漫主義者の自己暴露 九月の諸雑誌は、ほとんど満目これ北支問題である。そして、時節柄いろいろの形で特種の工夫がされているのであるが、いわゆる現地報告として、相当の蘊蓄・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・それにドストイェフスキイには浪漫派らしい弱点がある。恐らく夏目先生の非難は当たっているのだろう。 けれどもドストイェフスキイの偉大な内生活は表現の上の欠点を消してしまう。カラマゾフ兄弟は我々の新しい聖書である。そこには「人間」の心がすみ・・・ 和辻哲郎 「生きること作ること」
・・・日本画のこのような特質に注意を集めて、それを「浪漫的」と呼んでも、必ずしも不都合はないと思う。 そこでこの二つの態度の比較である。態度そのものの問題としては、どちらかが間違っているとは言い切れない。ミケランジェロは最後の審判において彼の・・・ 和辻哲郎 「院展遠望」
・・・ もっと具体的に言えば、氏はその幾分浪漫的な感情を満足させるような景色でなければ描く気にならないのではないか。 もとより自分は、対象の写実が正路であって自己情緒の表現が邪路であると言い切るのではない。いずれもともに正しい道であろう。・・・ 和辻哲郎 「院展日本画所感」
出典:青空文庫