・・・そして、大局的に眺めわたせば、現代の紛糾と困難を縫って猶プロレタリア作品が生れざるを得ない社会の現実の姿が浮上って来るのである。 或る人々は、プロレタリア作品がこのように内包しているプロレタリア性というものに我から全幅の信頼をかけ、その・・・ 宮本百合子 「プロ文学の中間報告」
・・・でこの作者が昔の浮上ったところをふるい落したことを買っていたが、しかし、あの批評を、作者自身は何とよまれたであろうか。 元よりも落付いたというような局部的なことは当っているかもしれないが、あの批評を全体として見れば、作家が作家に向ってい・・・ 宮本百合子 「文芸時評」
・・・という戯曲は、この作者の脚本として決して優れたものではないが、以上のようなこの作者の人生及び芸術的骨格を全く透きとおしに浮上らせている意味で、見落せない性質をもっている。山本有三氏は、この根幹をなす生涯のテーマから出立して、更にその人間とし・・・ 宮本百合子 「山本有三氏の境地」
・・・着物の裾には、睡い、深い、海の底の様子が一面に浮上りました。銀の珠でも溶かしたように重く、鈍く輝く水の中では、微かに藻が揺れ、泡沫が立ちのぼります。肩にたれた髪から潮の薫りが流れ出して、足許には渚の桜貝が散りそうです。 次第にお城の柱に・・・ 宮本百合子 「ようか月の晩」
出典:青空文庫