・・・ ドーン、バーン、ドドーンー 発破は機関銃のように続いて、又は速射砲のようにチョット間を置いて、鳴り続けた。 やがて、発破は鳴り止んだ。 海抜二千尺、山峡を流るる川は、吹雪の唸りと声を合せて、泡を噛んでいた。 物の音は、・・・ 葉山嘉樹 「坑夫の子」
・・・ さて只今のご論旨ではビジテリアンたるものすべからく無菌の水と岩石ぐらいを喰べて海抜二千尺以上ぐらいの高い処に生活すべしというのでありましたが、なるほど私共の中には一酸化炭素と水とから砂糖を合成する事をしきりに研究している人もあります。・・・ 宮沢賢治 「ビジテリアン大祭」
・・・そういう有様。海抜二千八百尺のところでも、おお自動車の便利さよで、こういう光景が展開される。その自動車があるので、私は胸も苦しくせずに五千何尺という志賀高原へのぼることも出来るのですが。戸外で山をながめ、引しまって新鮮で濃いような空気を吸っ・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・アルプス登攀列車は、一刻み、一刻み毎に、しっかり噛み合って巨大な重量を海抜数千メートルの高み迄ひき上げてゆく堅牢な歯車をもっている。わたし達が近代的外皮に装われた最も悪質な封建性から自身の全生活を解放して、民主主義に立つ眺望ひろい人生を確保・・・ 宮本百合子 「「どう考えるか」に就て」
出典:青空文庫