・・・今や落日、大洋、清風、蒼天、人心を一貫して流動する所のものを感得したり。 かるが故にわれは今なお牧場、森林、山岳を愛す、緑地の上、窮天の間、耳目の触るる所の者を愛す、これらはみなわが最純なる思想の錨、わが心わが霊及びわが徳性の乳母、導者・・・ 国木田独歩 「小春」
・・・それまで、ちょっとした随筆を二三篇かき、その一つであった「清風おもむろに吹き来つて」という随筆がきっかけとなって、明治から現代までの文学史と婦人作家の研究にとりかかった。「その年」の原稿は、日本の言論抑圧の標本として、赤鉛筆の姿をそのまま、・・・ 宮本百合子 「あとがき(『宮本百合子選集』第五巻)」
・・・、「藪の鶯」、「清風徐ろに吹来つて」、「短い翼」等明治から現代までの日本文学の動きと婦人作家の生きてきた道を追求する仕事を文芸に連載しはじめた。この年は戦争の進行につれて軍需生産を中心とする日本経済の「軍需インフレ」の無責任な活況が起った。・・・ 宮本百合子 「年譜」
出典:青空文庫