・・・この損失は全然無くすることは困難であるとしても半分なり三分の一なりに減少することは決して不可能ではないのである。 火災による国家の損失を軽減してもなるほど直接現金は浮かび上がっては来ない。むしろかえって火災は金の動きの一つの原因とはなり・・・ 寺田寅彦 「函館の大火について」
・・・ 罪悪の心理がもしほんとうに科学的な正確さをもって書き表わされていれば、それは読者にとってはかなり有益であり、そうしてそういう罪悪を予防し減少するような効果を生じるかもしれない。これに反して罪悪の外側のゆがんだ輪郭がいたずらに読者の病的・・・ 寺田寅彦 「一つの思考実験」
・・・しかし始めには正であった加速度はだんだん減少して零になって次には負になる。そうしてちょうど四十歳近くで漸近的に一つの極限に接近すると同時に速度は減退して零に近づく。そこでそのままに自然に任せておけばどうなるだろう。たどり付いた漸近線の水準を・・・ 寺田寅彦 「厄年と etc.」
・・・に対する子供らの好奇心と反感のずっと減少した時分にもう一ぺん「花園の夢」を見るのもいいかと考えている。 五 草刈り 屋敷内に草一本ないという自覚を享楽するために、わざわざ人を雇ってまでも裏庭のすみずみまできれいに草を・・・ 寺田寅彦 「路傍の草」
・・・産業の合理化で男の労働者数は減少して行っている時になお、女の数は少しずつながら増大の線をたどって来ていることは女の労力が男に代り得て、しかもやすいという事実を雄弁に語っているのではなくて、何であろう。 女の性の自然と社会事情から必然とさ・・・ 宮本百合子 「新しい婦人の職場と任務」
・・・ СССРで一九二六年に五千七十七万千九百九十七人あった文盲者が一九三〇年には既に四千三百万人前後に減り、五ヵ年計画完成後は都会七パーセント、村落二〇・六パーセントまで減少するということはきわめて自然なことだ。生活そのものが、文字はパン・・・ 宮本百合子 「子供・子供・子供のモスクワ」
・・・要するに文学青年どものもてあそびもので、作家は遂に文学青年目あてに技法の末技末節に拘泥した堕落におかれているのがきょうの現実である、純文芸の雑誌の経営困難も単行本の売ゆきの減少もすべてそこに原因をおいている、須くそのような文壇を解消せよと云・・・ 宮本百合子 「今日の文学の展望」
・・・し送りこまれること、既成の作家が、客分としてではなく日常活動において企業内サークルと結合することによってこそ、文学におけるプロレタリアートのヘゲモニー・党派性は確立され、組織内における小市民性の残滓の減少によって、左右への動揺の危険から高ま・・・ 宮本百合子 「前進のために」
・・・それだから、資本主義社会のような性の誇張というものがなくなったからと云って美は減少して居ない。 だからソヴェトに行っても決して美に対して心配する必要はない。それ故非常に朗かで、私が丸三年ソヴェトに居た間に、男と女と仕事の上のひけ目とか区・・・ 宮本百合子 「ソヴェトに於ける「恋愛の自由」に就て」
・・・それだから、つまり資本主義社会のような性の誇張というものがなくなったからと云って美は減少していない。だから決してソヴェトに行っても決して美に対して心配する必要はない。それで非常に朗かで、私が丸三年ソヴェトにいた間に、男と女と仕事の上のひけ目・・・ 宮本百合子 「ソヴェト・ロシアの素顔」
出典:青空文庫