・・・もっともこのかみ合わせがかなりぎしぎしときしるので、その減摩油としては行燈のともし油を綿切れに浸ませて時々急所急所に塗りつけていた。それで取っ手を回すと同じリズムでキュル/\/\と一種特別な轢音を立てるのであった。「みくり」を通過して平たく・・・ 寺田寅彦 「糸車」
・・・修辞法は器械の減摩油のような役目はするが、器械がなくては仕事はできないのである。世阿弥の能楽に関する著書など、いわゆる文章としてはずいぶん奇妙なものであるが、しかしまた実に天下一品の名文だと思うのである。 それで、考え方によっては科学と・・・ 寺田寅彦 「科学と文学」
・・・この場合の問題に密接な関係をもつであろうと思われる。この減摩油の効力を規定する因子としての oiliness は、ある学者の説では炭水素連鎖の屈撓性、あるいは連鎖が界面に横臥しうる性質と関連しているとのことであるが、現在の場合でも連鎖が屈伸・・・ 寺田寅彦 「鐘に釁る」
・・・これと似寄ったことでは、レーノルズの減摩油の作用の研究などもやはりそれまではほとんど物理学の圏外にあった問題をその圏内に引き入れたものだと言われよう。また同じレーノルズの砂の膨張性に関する研究は、その後あまり注目する人もなかったようである。・・・ 寺田寅彦 「物理学圏外の物理的現象」
出典:青空文庫