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・・・この温気……ねえ、お前さん。――(酒はいけない。飢と素早いこと、さっさ、と片づけて、さ、もう一のし。 今度はね、大百姓……古い農家の玄関なし……土間の広い処へ入りましたがね、若い人の、ぴったり戸口へ寄った工合で、鍵のかかっていないこ・・・
泉鏡花
「開扉一妖帖」
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・・・ この時まで枯木のごとく立ッていた吉里は、小万に顔を見合わせて涙をはらはらと零し、小万が呼びかけた声も耳に入らぬのか、小走りの草履の音をばたばたとさせて、裏梯子から二階の自分の室へ駈け込み、まだ温気のある布団の上に泣き倒れた。 ・・・
広津柳浪
「今戸心中」