・・・市学校は、あたかも門閥の念慮を測量する試験器というも可なり。(余輩もとより市学校に入らざる者を見て悉皆これを門閥守旧の人というに非ず。近来は市校の他に学校も多ければ、子弟のために適当の場所を選ぶは全く父母の心に存することにして、これがため、・・・ 福沢諭吉 「旧藩情」
・・・それからおまえはうんと走って陸地測量部まで行くんだ。そして二人ともこう言うんだ。北緯二十五度東経六厘の処に、目的のわからない大きな工事ができましたとな。二人とも言ってごらん」「北緯二十五度東経六厘の処に目的のわからない大きな工事ができま・・・ 宮沢賢治 「ありときのこ」
・・・ただ測量と園芸が来ないとか云っていた。あしたは日曜だけれども無くならないうちに買いに行こう。僕は国語と修身は農事試験場へ行った工藤さんから譲られてあるから残りは九冊だけだ。四月五日 日南万丁目へ屋根換えの手伝え(にやられ・・・ 宮沢賢治 「或る農学生の日誌」
・・・百も千もの大小さまざまの三角標、その大きなものの上には赤い点点をうった測量旗も見え、野原のはてはそれらがいちめん、たくさんたくさん集ってぼおっと青白い霧のよう、そこからかまたはもっと向うからかときどきさまざまの形のぼんやりした狼煙のようなも・・・ 宮沢賢治 「銀河鉄道の夜」
・・・その旅人と云っても、馬を扱う人の外は、薬屋か林務官、化石を探す学生、測量師など、ほんの僅かなものでした。 今年も、もう空に、透き徹った秋の粉が一面散り渡るようになりました。 雲がちぎれ、風が吹き、夏の休みももう明日だけです。 達・・・ 宮沢賢治 「種山ヶ原」
・・・この地図はもっと前に測量したんだから。その工場はどんなとこにあるの。」「ムラードの森のはずれだよ。」「ああ、これかしら、何の木だい、楢か樺だらう。唐檜やサイプレスではないね。」「楢と樺だよ。ああこれか。ぼくはねえ、どうも昨夜の音・・・ 宮沢賢治 「ポラーノの広場」
・・・ ソヴェト市民は、映画のスクリーンの上に見た、まだ雪が真白にのこっている早春の曠野で、疎らな人かげが働いているのを。測量器をかついで深い雪をこぎ、新しい集団農場の下ごしらえのために働いているコムソモールを照らす太陽と、彼等の白い元気のい・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
・・・ジャングルへ迷い込んだっきりになるものが少くなく、それ等は磁石も天体測量も出来ず、ましてそれを食べるかつ節なんかは持ち合せない気の毒な場合が多数だそうです。隆治さんはああいういい子で、勇気もあり、忍耐も強く、責任感も大きいから、私達とすれば・・・ 宮本百合子 「獄中への手紙」
・・・一体天台一万八千丈とは、いつ誰が測量したにしても、所詮高過ぎるようだが、とにかく虎のいる山である。道はなかなかきのうのようには捗らない。途中で午飯を食って、日が西に傾きかかったころ、国清寺の三門に着いた。智者大師の滅後に、隋の煬帝が立てたと・・・ 森鴎外 「寒山拾得」
・・・青年は自分の声のききめを測量しながら、怒りの表情の抑揚のつけ方をちょっと思案してみる。――これも自然である。声、表情、そうしてある目的のために老人の人格を圧迫している青年の意志、感情、打算。我々は外形に現われたものを感覚し、知覚するとともに・・・ 和辻哲郎 「「自然」を深めよ」
出典:青空文庫