・・・ あらゆるものの本体を見得る叡智と渾一に成った愛こそ願わしいものです。 自分は、愛の深化ということは、最も箇性的な、各自の本質的なものだと思わずにはいられません。 従って、既成の倫理学の概念や習俗の力は、いざという時、どれ程の力・・・ 宮本百合子 「偶感一語」
・・・けれども、C先生、私がよく申上た通り私は自分で、渾一の如何に偉大であり、又如何に至難な事であるかを知って居ります。知って居る事は愛でございます。 私の米国婦人が権能を持つ事、その事には肯定出来ても、其の運用の不純さに飽き足らず思うのは、・・・ 宮本百合子 「C先生への手紙」
・・・自身の創作のモティーヴを見きわめ、描こうとする対象と自身との渾一の状態を求め、話の筋よりは作家の生命が独特の色、体温、運動をもって小説の世界に呼吸しなければならない。そのように作家が己れにかえる道は、短篇小説の新しい見直しにあるのではないか・・・ 宮本百合子 「昭和の十四年間」
出典:青空文庫