・・・その建物のなかのすべての器械はみんなイーハトーヴじゅうの三百幾つかの活火山や休火山に続いていて、それらの火山の煙や灰を噴いたり、熔岩を流したりしているようすはもちろん、みかけはじっとしている古い火山でも、その中の熔岩やガスのもようから、山の・・・ 宮沢賢治 「グスコーブドリの伝記」
・・・それは昔山の方から流れて走って来て又火山灰に埋もれた五層の古い熔岩流だったのです。 崖のこっち側と向う側と昔は続いていたのでしょうがいつかの時代に裂けるか罅れるかしたのでしょう。霧のあるときは谷の底はまっ白でなんにも見えませんでした。・・・ 宮沢賢治 「谷」
・・・ええ、ここに一つの火山がある。熔岩を流す。その熔岩は地殻の深いところから太い棒になってのぼって来る。火山がだんだん衰えて、その腹の中まで冷えてしまう。熔岩の棒もかたまってしまう。それから火山は永い間に空気や水のために、だんだん崩れる。とうと・・・ 宮沢賢治 「楢ノ木大学士の野宿」
・・・ それから黄金色の熔岩がきらきらきらと流れ出して見る間にずっと扇形にひろがりました。見ていたものは「ああやったやった。」とそっちに手を延して高く叫びました。「やったやった。とうとう噴いた。」とペンネンネンネンネン・ネネム・・・ 宮沢賢治 「ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記」
・・・潮流の工合で、南洋からそういう植物をのせたまま浮島が漂って来て、大仕掛の山葵卸のようなそれ等の巖のギザギザに引っかかったまま固着したのか、または海中噴火でもし、溶岩が太平洋の波に打たれ、叩かれ、化学的分解作用で変化して巖はそんな奇妙なものと・・・ 宮本百合子 「九州の東海岸」
出典:青空文庫