・・・○文壇は来るべきなにものかに向かって動きつつある。亡ぶべき者が亡びるとともに、生まるべき者は必ず生まれそうに思われる。今年は必ず何かある。何かあらずにはいられない、僕らは皆小手しらべはすんだという気がしている。・・・ 芥川竜之介 「校正後に」
・・・天下の役人は役人がいぬと、天下も亡ぶように思っているが、それは役人のうぬ惚れだけじゃ。」「が僧都の御房の天下になれば、何御不足にもありますまい。」 俊寛様の御眼の中には、わたしの微笑が映ったように、やはり御微笑が浮びました。「成・・・ 芥川竜之介 「俊寛」
・・・ しかもその火鉢といわず、臼といわず、枕といわず、行燈といわず、一斉に絶えず微に揺いで、国が洪水に滅ぶる時、呼吸のあるは悉く死して、かかる者のみ漾う風情、ただソヨとの風もないのである。 十 その中に最も人間に・・・ 泉鏡花 「伊勢之巻」
・・・人は悔改めずば皆な尽く亡ぶべしとの警告。十三章一節より五節まで。救わるる者は少なき乎との質問に答えて。同十三章二十二節より三十節まで。天国への招待。十四章十五節―二十四節。天国実現の状況。十七章二十節―三十七節。財貨委託・・・ 内村鑑三 「聖書の読方」
・・・国の興ると亡ぶるとはこのときに定まるのであります。どんな国にもときには暗黒が臨みます。そのとき、これに打ち勝つことのできる民が、その民が永久に栄ゆるのであります。あたかも疾病の襲うところとなりて人の健康がわかると同然であります。平常のときに・・・ 内村鑑三 「デンマルク国の話」
・・・「その君の武器は、善人に手渡さなきゃア、国は滅ぶね。もし悪人に渡した日には、そりゃ、敗けだ。」と、何ぜともなく梶は呟いて立ち上った。神います、と彼は文句なくそう思ったのである。 栖方と梶とは外へ出た。西日の射す退けどきの渋谷のプ・・・ 横光利一 「微笑」
・・・の重荷に押しつぶされるような人間は、畢竟滅ぶべき運命を担っているのであった。忘却の甘みに救われるような人間は、「生きた死骸」になるはずの頽廃者に過ぎなかった。潰滅よりもさらに烈しい苦痛を忍び、忘却が到底企て及ばざる突破の歓喜を追い求むる者こ・・・ 和辻哲郎 「転向」
出典:青空文庫