・・・愛という感情が真実わたしたちの心に働いているとき、どうして漫画のように肥った両手をあわせて膝をつき、存在しもしない何かに向って上眼をつかっていられましょう。この社会にあっては条理にあわないことを、ないようにしてゆくこと。憎むべきものを凜然と・・・ 宮本百合子 「愛」
・・・アメリカの漫画によくあるように男が女からかけられたエプロンをかけて、女の代りに子供のオムツも洗ってやる、と誇ることだろうか。 一時のこと、特別な場合として勿論そういうことも起るのは生活の自然だけれども、男女の協力ということは、決して、今・・・ 宮本百合子 「明日をつくる力」
・・・日本にきた教育使節団の人々が、アメリカの子供が漫画でどんなに毒されているかということについてふれていました。それから学習そのものを楽にたのしんでさせようという程度がすぎて、自立的な児童の探求心がのばされるよりもさきにあんまりたやすく解決が与・・・ 宮本百合子 「アメリカ文化の問題」
・・・ 現代のソヴェト同盟でも、諷刺は新しい立場から研究され、絵画の領域では漫画といっしょに、大いに階級的活動に利用されている。 二 諷刺は、極めて現実的である。 対象と主体との相異対立がはっきり認識され・・・ 宮本百合子 「新たなプロレタリア文学」
・・・と文学的に詠嘆するに至っては、一箇の腹立たしい漫画である。 なるほど、村についた最初から彼プロレタリア作家は、K部落の窮乏がどんな外見をとって現れているかということは、こまかに書きとめている。外から部落へ入って来たものとして観ている。し・・・ 宮本百合子 「一連の非プロレタリア的作品」
・・・蓊助君は、漫画修行による人生観察の過程で、旧套の重荷に反撥して自らを破ることが、新世代にのしかかる圧力を克服することではないことを、既に学んでいるであろう。昨今の世界情勢の中を行く旅行について父藤村氏の「自由主義的慧眼」に希望している希望に・・・ 宮本百合子 「鴎外・漱石・藤村など」
・・・ ラジオなどできく落語が、近頃は妙なものになって教訓落語だが、話の筋は結局ききてである働く人々の生活や文化の低さを莫迦らしく漫画化したようなものが多くていい心持はしない。実質的にはちっとも健全と云えないのである。 健全性というも・・・ 宮本百合子 「“健全性”の難しさ」
・・・時事漫画に久夫でも描きそうな野球試合鳥瞰図があると思うと、西洋の女がい、男がい、それぞれに文句が附いているのであった。「晴れて嬉しい新世帯」都々逸のような見だしの下に、新夫婦が睦じそうにさし向いになっている。やがて口論の場面が来、最後には奇・・・ 宮本百合子 「高台寺」
・・・金持というのが漫画にあるように袋に金を詰めて金庫に溜めて、金鎖の太いのをお腹の上にたらしているような罪のないものならば、漫画にしておけばすむのですけれども、本当の資本家というのはそれはそれは抜け目がない。私共がわずかのお金で魔法みたいにして・・・ 宮本百合子 「幸福の建設」
・・・というスローガンや、工場と農村の労働、その結合を主題にした絵、または一目見ても思わずふき出すような反宗教の漫画を描いた列車が、屋根に赤い旗をひるがえし、窓からつき出した元気な若者たちの髪の毛を早春の勁い風に吹きとばしながら、走った。 そ・・・ 宮本百合子 「五ヵ年計画とソヴェトの芸術」
出典:青空文庫